SONGS 30th Anniversary Edition
「山下達郎と大貫妙子を擁した伝説のバンド」sugar babe。
悲しいかな、近年はその説明では全く凄さが伝わりません。
自分が属する20代とっては、山下達郎は「クリスマスイヴの人」であり、大貫妙子に至っては下手をすると「メトロポリタン美術館の人」であることすら知られていないのです。私自身も伊藤氏については全く知識がありません。
しかし、彼らが遺した唯一のアルバムである本作を聴けば、そんなことは全く関係なくなるでしょう。
確かに近年の曲に比べると、録音の質も、音の作り込みも優れているとは言い難く、また、山下達郎の歌唱には現在のような深みが無く、大貫妙子も若さに任せて歌っているように聴こえます。
しかし、DOWNTOWNを始めとする楽曲そのものの完成度の高さと、その歌唱・演奏の瑞々しさは、それらの欠点をカバーしてあまりあるものです。
現在のポップスはすべからく彼らの影響下にあるため、無意味な議論かもしれませんが、きっと彼らが今の時代にデビューしていたとしても、きっと評価されていたことでしょう。
「山下達郎も大貫妙子も、デビューから大御所だった訳ではない。しかしその当時から、山下達郎は山下達郎だったし、大貫妙子は大貫妙子だった」という、ある意味当たり前のことが確認できる名アルバムです。
A LONG VACATION
大瀧詠一氏の本業は作曲家ですが,たま~に気が向くと自分で曲を出すんです。これはそんな氏が80年頃(正確に憶えてない・・・)に出した超超貴重な一枚。ハッキリ言ってポップス史上に残る名作です。1曲目の「君は天然色」は30代以上なら誰もが知る名曲ですし,他の9曲も全てシングルカット並のクオリティ。氏のちょっと甘くてアンニュイな歌声は,個人的には山下達郎氏レベルだと思います(タイプは違うけど)。私は子どもの時分からこのアルバムが大好きで,約20年経った今でも車中でいつも聴いてますが,全く古さを感じません。全てのポップス好きの方に聴いて欲しい一枚です。
大滝詠一 Talks About Niagara (トークス・アバウト・ナイアガラ)
大滝詠一御大の不朽の名盤の数々にまつわる御大の肉声インタビューが、
何とも言えずノスタルジックな気持ちにさせられます。
この時代を過ぎていない若い方々には、何を言っているかも分からないだろう、とも。
余計なお世話でしょうが…
ただ、そういう若い方々にとっても、
大滝御大が実に真面目にアメリカンポップスの源流について注釈する後半は、
なかなか刺激に富むと思います。
当然のことですが、大滝御大研究においては、第一級資料だと思います。
御大は,実に詳しく当時のメモを残しており,そこから記憶を喚起する形でインタビューは進みます。
が、この一冊に資料的価値を求めるのは何となく野暮というもののような気もします。
ストライク世代の皆さんが懐かしさにしばし感涙するツールとして、
(転がしておいて、気が向いたらちょっと読んで、タイムスリップするという感じで1ヶ月は行けます!)
お奨めしたいです。
読み込んでいくと、ついにはロンバケ30周年盤
A LONG VACATION 30th Edition
買いたくなりますね。
ちなみにロンバケ30周年最新インタビューは
レコード・コレクターズ 2011年 04月号
に有ります。こちらもどうぞ。
クレージーキャッツ・デラックス [VHS]
往年のクレージー映画のエッセンスを、歌を中心に大滝詠一がサンプリングしたいわばクレージー・ワールドの入門編。
当時大滝は「イエローサブマリン音頭」などの温故知新ネタ路線を爆走中で、それと東宝の思惑が見事にかみ合い、本作が生み出されたことは幸福としか言い様が無い。
クレージーの歌は多くが音源として流通しているが、実際の映画の中で見るとその魅力が一層際立つ。
植木等が人見明と脱力感あふれる表情で踊りまくる「シビレ節」や、ラスベガスの大通りを交通規制し過剰に踊り歌う「ハローラスベガス」などは、まさに映像でしか味わえない強烈なインパクトだ。
特に「ハッスル・ホイ」で「ハッスルハッスル」と連呼し万歳しながらカメラによってくる植木等のイってしまった表情は最早ホラーの域である。
制作当時再発売された作品に重点が置かれた大人の事情のせいでダレ気味の後半や、例えば「大冒険」の「辞世の歌」等の、物語の前後が判れば百倍笑える隠れた名曲が漏れていたりと、今となってはいささか残念だ。
しかし、クレイジーが最も輝いていた時代のエッセンスが詰まった名編集である事には間違いない。
入門編とは書いたが、50周年を迎えて本来あるべき全作品DVD化の動きが不透明な状況下では貴重な情報源である。
映画とシングルカットで歌詞が違う曲も多数有り、マニアを自認するなら是非見ておく必要があるだろう。
A LONG VACATION 30th Edition
アナログ時代からの愛聴盤で、状態の良いアナログレコードと20周年版のCDを所有しています。内容は改めて言うまでもなく、日本のポピュラー音楽史上、屈指の名盤です。今でも聴くたびに新しい発見があったりして飽きません。
しかし、ロンバケ以外もそうなんですが、10年周期でちょっと音を良くしたり、おまけを小出しにしながら旧譜をリリースし続けるというはどうなんでしょう。40周年、50周年も何らかの形で出すんでしょうかね。
もっとも、紙ジャケやSHM-CD、BlueSpecCDなど、メーカーの都合で勝手にリリースするものよりは、アーティスト本人の監修なので良心的なんでしょうけど。
化粧直しされた旧譜よりも、大滝さんの新譜が聴きたいですね。