ぷりぷり県 1 (小学館文庫)
吉田戦車の「県」に対する思いと偏見が入り混じった傑作。本人がどう思っているかは知らないが、私の中では彼の代表作だ。
当初は、架空の県「ぷりぷり県」のおかしさを笑うという感じだったが、だんだんと既存の県の特徴を極端にデフォルメする方向に。これが面白い。
鵜飼いで有名な岐阜県人が鵜に仕事をさせていたり、香川県人がうどんの麺でビルから落ちそうになった人を助けてみたり、奈良県人が大仏だったり、まぁ、そんなマンガです。
ふと調べてみたら、もう新品は流通していないんですね。
復刊されないかなぁ。
パルテノン銀座通り
“架空の○○”というネタは昔からミュージシャンの遊び心を刺激する定番ではあるが、ここでは“架空の県”である。但し元ネタが他者の作品であるゆえの気遣いか、歌詞に説明的な部分が目立つ。ここはリスナーを信用して、または歌詞カードで解説するなどして、もう一歩踏み込んでもよかったのではないか。
知久寿焼と石川浩司の両者のキャラクターはもともとギャグ漫画との親和性が高いのですんなりと“ぷりぷり県”という世界に入り込んでいるが、滝本晃司はあくまで“たまの滝本”というスタンスで屹立している。傘を差して佇む紳士の足許で子供二人が騒いで遊んでいる、ようにも見える。煮え切らないなあ滝本さん、とも言えるが、漫画の人気という一過性のものが時間の経過によって拭い取られたあとに“たまの世界”として普遍的に聴けるのは寧ろその滝本作品である。一方で知久、石川の作品のうちいくつかは、漫画のネタをなぞって音楽作品にしただけ、と言わざるを得ないものもある。つまり総合的に見て、“たま”と“ぷりぷり県”が融合しきっておらず、たま寄りの部分とぷりぷり県寄りの部分とに分離してしまっている、という印象である。
漫画のイメージアルバムであるためアピールする対象を?みにくかったのか。全8曲というやや短いヴォリュームも含め、物足りなさは否めない。実は本作発表時のライヴを見る機会があったのだが、収録曲以外にもぷりぷり県ネタの曲が披露されていてそれらも悪い出来ではなかったと思うのだが、何故アルバムに入れなかったのだろうか。
ザ・ビートルズで言えば『イエロー・サブマリン』、サザンオールスターズで言えば『稲村ジェーン』。作品の性質上しかたないけれども、決して駄作ではないが、間違っても代表作には挙げられないだろう。
ところで、改めて今聴き返しても、滝本による表題曲は吉田拓郎みたいでなんかおかしくなる。
山羊王のテーマ
川本真琴(現タイガーフェイクファ?)さんがTVなどに出なくなってから、こちらも彼女を追いかけるようなことをせず、かつて購入していたアルバムを聞きながら、たまに「今どうしているのかな」と思うことが何度もあったのですが、ネットで2006年にこのCDを出していることを最近知り、購入してみました。タイガーフェイクファ特設サイトで「山羊王のテーマ」の一部分が聞けるのですが、すごく楽しそうな曲でしたし。
なんといっても元気に歌う彼女の声が聞けるのがうれしいです。声はデビュー時から較べ少し落ち着いてきた感じはしますが変わってないですね〜。ライブはずっと続けてこられたようでしすし。3曲目の「成城学園の歌」は赤坂のライブハウスでの音源ですが、私のような地方在住の者にはまず一生聞けない音なので雰囲気が伝わってきてこれもうれしい限り。4曲目は「山羊王のテーマ」のカラオケですがコーラスをタイガーフェイクファ本人が歌っていまして、つまりタイフェイとハモれる!というかなりデラックスな内容です。
それと中ジャケ見開きに緑の木々(たぶん)を背景にした彼女の写真があるのですが、これはあまりにも美しすぎ。額に入れて飾りたいくらい。
まんが親 1 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
こういうマンガは難しい。
中身が実録だから、私小説みたいにフィクションだと突っ張るわけにもいかないし。
吉田戦車は絵がうまいし、伊藤理佐の短文は気が効いてるし、面白い。でも、
でも複雑である。
ロックンローラーが親孝行しているような気がして、
吉田戦車のギャグマンガのファンとしては複雑なのである。
ロックンローラーがレコード大賞に出て、出演までは許すものの
大賞を取って「この喜びを両親に伝えたいです」といったら許さない。
といった気持ちなのである。
あと、私も経験があるが、はじめての子供の時の体験は
「自分だけが貴重な経験してる」と、勘違いしちゃうんですよね。
たくさんの人が経験しているのに。
あるあるネタで行くしか無いことに気付くのは後になってからです。