遺体―震災、津波の果てに
その敷居の低さもあるのでしょうが、大マスコミは報じない、
けれど、我々が知らなければならない事実を、この本は記してくれています。
テレビに映る風景を観て、地震が全てを破壊し、津波が全てを掻っ攫っていった、という事を、
被災地から遥か遠くに暮らしている僕ですが、ほんの少しは知っている、つもりでいました。でも違ったようです。
まさに目の前で、波に飲み込まれようとしている人を救おうと思っても・・・、
新たに一体の遺体を発見し、時間をかけて収容を試みようと思っても・・・、
難を逃れ、今生きている自分自身を優先しなければならない、という当然の判断を前にして、それを諦めざるを得ない。
人を顧みる余裕のない極限の状態に陥り、やり場のない感情を、同じ町に暮らし、同じ境遇にいる人に対してぶつけなければならない。
本震と第一波が発生してから時間が経過して、そこから急速に深刻さを増す、倫理観や道徳観、宗教観に、
『人間』に、襲いかかる災いもまた、被災していない人々にはなかなか知られない、けれど重い重い問題が、確かにあったし、
今もまだ、終わりを迎えていないのかもしれません。
360度から残酷な現実を突きつけられ、大切な人を次々に失い、
いつの間にか独りぼっちの闘いを強いられてしまった、被災者の皆さんが、絶対に救われなければならない。
そして絶対に、希望を見出せるところまで、光が被災地に注がれなければならない。
まず被災された方々の心と体が軽くなるように、被災していない人間が、多くの真実を知り、
自分なりに咀嚼し、考え、行動しなければならない。
それが日本における一番の、喫緊の目標だと、8ヶ月近く経って、また改めて痛感しました。
VOICE OF HEAVEN
切なくなる、心温まる
相反するような感想ですが、自分の今の心のどんな状態にも共鳴してくれる曲でした。
エンヤのような。
懐かしくなるような。
くせがないので聞き流せるところが、リラックス音楽にぴったりだと思います。
心の糸
偶然NHKラジオでこの曲を聞き、一瞬にして虜になりました。さっそくCDを買いに行こうとして調べてみたら、なんと16年前の阪神・淡路大震災の時の企画物でとっくに廃盤。しかし、どうしてもあきらめきれず、昨今はやりのYouTubeで「もしや」と検索したら、あっさり見つかりました。で、とりあえずおさまっているのですが、今回の東日本大震災に鑑み、これはぜひともちゃんとしたCDで復刻すべきものと思います。歌詞もメロディーも本当に素晴らしく、心を揺さぶります。僭越ですが、この曲を聞けば被災者の方々も少しでも明日へ向かって生きていく勇気が湧いてくるような気がします。1番では突然の悲劇でまだ心の整理がつかない人間の心の弱さが素直に述べられているところが、そこらの単純な上から目線の応援歌とは一味違います。そして2番の途中からそれをなんとか乗り越えていこうとする心の強さに変化していく部分は、人間が本来持つ尊厳性を思い出させてくれ、何度聴いても鳥肌ものです。よくこんな歌詞が書けたものと感心します。当時すでにトッブクラスだった美人演歌歌手を贅沢に五人も揃えただけでも大変な企画でした。こんな名曲を廃盤のままにしておいてよいはずがありません。SONYさん、ぜひ復刻をお願いします。
東日本大震災 石巻災害医療の全記録 (ブルーバックス)
本書は震災で甚大な被害を受けた宮城県石巻市にある石巻赤十字病院の7ヵ月間の話である。
そこで陣頭指揮を執ったのが本書の著者、石井正氏である。
他書のような災害ユートピア期にある「絆」「頑張ろう」「感動」「私たちに何ができるか」「忘れない」「英雄礼賛」的脚色が一切無く、ただ事実をありのまま綴っている。
また作家や記者でなく、現場を指揮する著者の視点から書かれており、「危機管理」の視点から多くのことが学べる。
「平時の備え・訓練」「リーダーシップ」「コミュニケーション」「ネットワーク」「有事の対応」と『全ては被災者のために』の下、立場や組織の枠を超え「オールジャパン」で何でも取り組む姿には本当に頭が下がる。
―しかし残念なことに、私たちの政府や政治家はこれと逆の動きをしてしまった。
政治家たちの防災服ブームに始まり、与野党の対立が激化。
そして国家の司令塔である首相官邸では対策本部などの20以上の会議乱立、東電や保安院ら各省庁との連携が取れずにパニック状態に陥った。
(上記の問題があっても、当事者たちは「現・組織システムに問題ない」と改善する気はないようで、
村山さんは「阪神大震災の時は組織と人の連携がうまくいった」と自画自賛。
行政府は何もしたくないのだろうか・・・残念です)
この差は何だろう?
石巻医療チームからは「危機管理」を学べる。
政府や政治家の対応は「反面教師」として。
両方の視点から学ばなければいけないと強く感じた。