殉国―陸軍二等兵比嘉真一 (文春文庫)
吉村氏の作品を読むようになって5年。今では立派な吉村ファン(自称?)である私が、最初に読んだ一冊である。
夫の実家、結婚前の彼の部屋の片隅にこの本はあった。「これ、借りるね」と何げなく手に取り、頁を繰った瞬間から私は凄惨な沖縄戦の真っ只中に放り出されたのだ。耳元をかすめる銃弾、頭髪が逆立つような爆風、空を焦がす火炎。いつか旅行で訪れたあの沖縄の、からりとした明るい空気が私の中でみるみる変質してゆく。いつしか主人公の比嘉真一の意識に呑み込まれて行く。
吉村氏は、冷徹なまでに端正な筆致で主人公が戦火に追われ、しかし一兵士として死に場所を求めるようにさまよう姿を描き出す。この臨場感は、時として音や匂いまでも感じるほどだ。吉村氏の作品には一貫して“死”と現実が縦糸として織り込まれているが、本作品はその中でも最も生々しい感覚を、読み手に与えるものではないだろうか。
日本で半世紀前、実際にこのようなことが起こったのだ。
青い海の沖縄にしか興味がないあなた、『プライベートライアン』を瞬きもせずに見通したあなたに、一読を勧めたい。
ブラームス:交響曲第1番~のだめカンタービレ
現実の演奏者が分からないというクラシックでは有り得ない様なCDを買うわけですから、それで演奏がドウだのコウだの言うことよりも、単純にのだめの世界を楽しめば良いのではないかと思って買いました。
間違い探しの演奏が入っているだけでも、洒落ているではありませんか。
世にブラームス1番の名盤はいっぱいあるわけですし、それでもあえてこのCDに関心を持つというのであれば、企画側の遊び心にこちらも便乗する、演奏も楽しめたら儲けもの、それで十分じゃないでしょうか。
だって、、CDジャケットの千秋だけでも、、、いいもの♪
東電OL殺人事件 (新潮文庫)
始めの断り書きの中で、著者は東電OLが堕落の道を歩んだその本当の理由を少しでも浮き上がらせたいと述べている。事件当時のマスコミによる残虐なまでのプライバシー侵害報道(作り話も多数あったよう)によて傷つけられたであろう彼女のために。彼女の無念をはらすために。私はそれを読んで興味を持ち手にとってみた。しかし実際読んでみると、容疑者となっネパール人の無実をはらすため彼の故郷に行ってみたり、必要以上に裁判の様子が描いてあったり(どうやって殺されたかはあまり興味ないんだけど・・・)、あまりに彼女に関係のないことが羅列されているような気がした。ネパール人の冤罪を覆すことを軸にした話だったっけ?と思うほど、そういったことの方に比重がいっていた。著者の彼女への想いは所々に出てくる熱い言葉に感じられるが、期待通りには彼女の心に近づけていないようだ。著者は、この本の趣旨を述べる際に、決して彼女のプライバシーを暴くために書くわけではない、としている。しかしやはり心に近づくにはそれが必要なのではないか?その前に、著者は十分にプライバシー侵害しているけれどね。だって彼女が一日に何人とセックスしたかとか、とういうようなことは書いてるもの。だったら、もっと彼女の生い立ちなどもきっちり取材してほしかった。今度こそ誤った情報ではない、誠意ある態度で振り返ることができるチャンスだった!私たちは何で彼女が堕落してしまったかを知りたいのだ。この本は逆に彼女を中途半端に放り出しただけで、無念を晴らすどころかもっと辱めにあわせた可能性も否めないものになってる。私のみたところでは。著者の熱意は伝わったけどね。だから星はみっつ。
白昼の死角【DVD】
原作:高木彬光の最高傑作と呼ばれる「白昼の死角(黄金の死角の改題)」は 1100枚の長編であり、戦後間もなく実際に起こった「光クラブ事件」(東大生による闇金融事件)をベースにした経済犯罪小説(法の死角をついた手形のパクリの犯罪がメイン)です。(この本以外に「青の時代」という本も同様に光クラブ事件をベースにした本がありますが「白昼の死角」の方が個人的には面白かった)
内容が犯罪小説のためなかなかDVD化しにくかった・・?今までVHSでは発売されてましたが 既に入手しにくく 一時は中古で2万円以上という価格であった時期もあり、ましてDVD化されて久しい今日,今更VHSでの購入は躊躇われていましたがようやくDVD化ですぐ予約しました。
映画の内容は原作が長編のためやや省略した部分があり ハードボイルドタッチだったと記憶してます。
主人公達の学生時代の姿はやや年齢の関係で厳しい感もありますが その後の大人になったとき演技からみるとそれでよかったように思います。ダウンタウンブギウギバンドの主題歌「欲望の街」は今聞いてみてもインパクトありますよね・「狼は生きろ 豚は死ね」というコピーで話題をさらった角川映画「白昼の死角」本当にようやくのDVD化です。よくみると高木彬光や角川春樹がカメオ出演、西田敏行、丹波哲郎も出演してます。
夏木勲 千葉真一 天知茂がかっこいい!島田陽子って本当に美人でした・・・
「白昼の死角」は 渡瀬恒彦主演のTVドラマもありました。こちらはTVドラマのため映画以上に原作を細かく演出あり是非DVD化お願いします
千葉流 サムライへの道
千葉真一ことJJサニー千葉こと和千永 倫道(名前多い!)2冊目の自伝的書籍。
前作「千葉真一 改め 和千永倫道」の内容の薄さを補完すべく多少細かく書かれててファンなら嬉しい。
いい話がたくさん載ってる中印象的だったのが川谷拓三がプロボクサーに殴られて目玉が飛び出したことを参考に「直撃!地獄拳」で室田日出男の目を飛び出させる演出にした話・・・ほんまかいな!?
もうひとつは隻眼の柳生十兵衛役をやり続けた結果、片目だけ酷使しすぎて人工レンズを入れることになったエピソード・・・これ初めて知ったけどすごい!
あと、タイトルどおり文中でも武士道を説きまくってるのですがこの本を読んで新渡戸稲造の本に興味を持って読んでくれたら嬉しい・・・みたいなことを書いてた。千葉ちゃんにそこまで言われたら読むしかない!
これからもぜひ年に1冊くらいは千葉本を刊行してほしいです。