成恵の世界 10 (角川コミックス・エース 60-10)
1巻の頃からずっとハイレベルなSFラブコメ。
どんなSFネタでも実行できる舞台は、想像する楽しみを与えてくれます。
伊達にタイトルに世界はついてない。
さて、10巻の内容は質の高い短編集。
新田と工藤のいい雰囲気や、和人と成恵の仲直り話といった恋愛要素から始まって、もはや成恵の鉄板となりつつあるタイムリープネタまで。
成恵の魅力を詰め込んだ巻になっていると思います。
一方、各人の悩みが少しずつ解消されて、なんだかこの漫画も最終回が近いようで寂しくもあります。
「お話がいよいよ込み入って来ましたが」という作者コメにも、終わりが近いというニュアンスがあるような。
何巻で終わるにしろ、自分は最後まで付き合いますけどね。
成恵の世界はいい世界です。
成恵の世界 DVD-BOX
小粒ながら、豊かな内容と優れた構成を併せ持つ秀作アニメ。控え目なたたずまいの中に爽やかで心のこもった演出が施されている大いに好感の持てる作品です。原作漫画はまだ完結していないので、かなり短縮した作りになってはいるものの、オリジナルの魅力が誠実に伝えらえていることは確かです。
宇宙人の血をひく少女、成恵と平凡な地球人の少年、和人とのラブストーリーがその骨子ですが、宇宙がらみといっても大げさなSF色を前面に打ち出してはおらず、あくまでもささやかな日常が舞台となっているところに新鮮さを感じます。はらはらするような恋の駆け引きに主眼が置かれているわけではなく、ごく自然な流れで恋仲になった主役カップルと周囲の人々との心の触れ合いがさりげなく、しかし感動的に描かれているところがとてもいい。
コンパクトなワンクール尺の中にバラエティに富んだエピソードを無理なく散りばめた構成が素晴らしい。主役カップルの動向を描くだけではなく、成恵の両親の出会いのエピソードや、銀河軍から脱走してきた悲しき星船である春名のエピソードなどが随所に配されてドラマとしての厚みが加わり作品全体の印象度を高めています。また成恵と和人の恋をめぐる展開も、ちょっとした冒険あり、可愛らしいすれ違いあり、心和むロマンティックな場面ありと観ていてとても微笑ましい。
たくましくも純粋な成恵と穏やかで心優しい和人の魅力はもちろん、このカップルを囲むサブキャラクターたちの魅力が十分発揮されているところもこのアニメの良き特色です。最初は接点の無かった登場人物たちが出会い次第に心を通わせていくあたりの演出もさりげなく自然体。気難しそうでいて実はとても面倒見のいいSFマニアのはじめ、友達思いの野球少年正樹、宇宙からやってきた成恵の姉でどこか寂しげな香奈花、孤独な香奈花を温かく見守りながら導く星船の化身バチスカーフらのキャラクター造形があくまでも優しく実に心地いい。
宇宙人としての宿命を背負いながらも故郷である地球をこよなく愛し真直ぐに生きる成恵。その彼女のありのままを優しく受け入れる和人。アイデンティティの壁を超えて一生懸命恋をする若き二人の存在が初々しく温かく、そしてちょっぴり切ない。身分や立場に関係なく相手の存在そのものを愛おしむことの大切さが心に染み入ります。成恵の両親のエピソードや春名の恋路にまつわるエピソードでも、このハートのあるスタンスは一貫しています。そういった意味でも本編はSFながら、オーバーなまでにテクノロジーや戦闘能力をひけらかす作品ではなく、心から人を大切に思うことの尊さ美しさをごく自然に優しく語りかけてくれている味わい深い人間ドラマであると言えるでしょう。
まだまだ小粒ながら素晴らしい隠れたアニメーションが存在することを実感させてくれる、これはささやかだけれど、確かなときめきと温かさがいっぱいの珠玉のボーイ・ミーツ・ガール。
成恵の世界 (12) (角川コミックスエース)
ごく普通の一般人である和人が宇宙人の成恵に出会うという
ありふれたボーイミーツガール話にSFのしずくを垂らしたような本作品.
しずく,程度で,単にボーイミーツガール話をニヤニヤしながら読むのが楽しみでした.
ところが,巻が進むと今やSF話にボーミーツガールの名残りを残すといえるぐらいに,
とことんSFの話となってまいりました.
だが,それがいい.
連載から時間が経過して,私も多くのことを学んできた状態で,
単調な日常生活に終始する作品では物足りないと考えるようになってきたからです.
漫画は,別に読みやすい必然はありません
読みやすいものは「多くの人が理解可能」であるというだけです.
「理解不可能」が「悪い作品」ではありません
ノーベル賞の論文を「多くの人が理解不可能」でありながら賞賛されるようにです
そんな私にとって,この作品は数少ない手持ちのコミックとなりました.
機族や星門,蛇の設定を適当に投げっぱなしではなく,まっとうにシミュレーションし,
消化したこの作品は,後世にも胸を張れる作品だと思います.
大学生時代から買い続けて社会人となった今でも続きを楽しみにできる漫画,
ということで評価は満点でございます.
様々な経験を経たからこそ,日常は輝くワケで...
成恵の世界 (6) [DVD]
「小さな結婚式」はハートウォームな良くできた話だと思うのですが、問題点がひとつ。原作では別のエピソード(名作です)で出てきた成恵の作文を最後に持ってきているのですが、違う話に持ってきたためにニュアンスが違ってしまっています。成恵の母への思いを書いた非常に感動的な作文だけに(和人じゃ無くても泣けます)、こういう扱いをして良かったのかどうか疑問です。なんとかこの作文を使いたかった、というのは解るのですが。
「祭りの夜」は、舞台と成恵の浴衣以外はほぼアニメオリジナル。個人的には、原作の祭の話のままでも十分シリーズの掉尾を飾るのにふさわしい、感動的な話になったと思いますが、ま、サービス、という事ですか。四季ちゃんも出てこなかったことだし、もしかしたら有るかもしれない次のシリーズに期待しましょう。
成恵の世界 (11) (角川コミックス・エース 60-11)
私の大好きな作品のひとつですので、少し辛口のコメントを...。
毎回期待しているものの最近の作品はSF設定の消化不良が目立ちます。限られたページの中に無理に複雑な話を詰め込もうとせず、もっとシンプルな設定にしては如何でしょうか?
今回の蛇の話についても、単に普通の機族の卵が間違ってやってきたという場面設定で良いような気がします。どうしよう?と、あたふたしている主人公二人を皆で助ける仲間たちという風景の方が成恵の世界らしいです。(単純な話だと思っていたら実は裏にもっと複雑な話があったと言って、後から広がって行く方が話が軽快に進みます)
最近は魔法全盛の時代でSFテイストの作品は少なくなりましたので、是非ともこの作風で続けて欲しい所です。「人の優しさが感じられる、ほのぼのSF路線」で行きましょう。星船の生真面目さが好きです。