ことばと文化の日韓比較―相互理解をめざして
『冬のソナタ』で昔の恋人を忘れられないチェ・ジウが、どうしても愛せないフィアンセに向かって「私たち、話し合いましょう」と何度も繰り返し言う。
日本の女性だったら「いや」でお終いになるところだが、言葉で納得しあおうとするところが、何事も理屈っぽい韓国人らしいと言える。
それは著者が指摘するように、「すみません」と「ありがとう」とお金を借りるときの頼み方の違いにも通じる日韓の言葉文化の違いが背景にあるからだ。
熱いが、理論的、論理的。情に厚いが、同時に黒白をはっきりさせたがる韓国人気質、玉虫色を好み、まあまあと収めようとする日本人気質との違いについて社会言語学的観点から理解を深める好書である。
箸とチョッカラク―ことばと文化の日韓比較 (ドルフィン・ブックス)
料理に、サッカー・ワールド・カップ共同開催、「冬のソナタ」、そしてヨン様。韓国ブームの中で、戦争の悲劇的な関係を越えて、素顔のままで韓国の人々と対等につきあう時がそろそろ来たのかなと感じます。本書は、そうした「つきあい」を始める上で不可欠な、挨拶、御礼、贈り物、人の敬称、会話の進め方、人間関係などの基本的なコミュニケーションの「見えざる」ルールを、文化的背景、日韓比較を通して、時には英米とのを交えつつ分かり易く教えてくれ、興味深く読ませてもらいました。韓国ドラマもより楽しくなりそうです。
同時に、この本を読んでいるときには、自分の「日本人らしさ」(私は日本人)や「らしくなささ」を再発見しました。そんな自己再発見の過程もとても興味深かったです。
私たち日本人の多くは、アメリカにばかり目がいく傾向があると思うのですが、日本人としては、もっと身近な、でもほとんど理解できていない隣人たちについて理解して、豊かなアジア関係を育むことも大切なことだと思います。韓国の方とお仕事をされたり、日常的に接していらっしゃる方には、「当たり前」と思っていることをチェックするために是非読んでは如何でしょう。そうした方々は、皆大切な民間大使で、未来の日韓関係の担い手ですものね。
この本は、いろいろな意味で、なんだか「21世紀の裾野の広い日韓関係のための1冊」だと思いました。