真幸くあらば [DVD]
尾野真千子が上手い。クリスチャンゆえに罪も罪人も憎めない。それどころか、婚約者には裏切られ、夫とのあいだには断絶さえ感じ、唯一心を許せるのが淳なのだ。しかし、彼には触れることもできず、その命の期限は確実に近づいている。淳を愛してしまう薫の覚悟と葛藤と純潔を、薫になり切って表わす芝居はみごとだ。
とにかく静かな映画だ。固定カメラで構図に凝った映像に主人公2人の独白によって、物語は淡々とすすんでいく。それでも飽きさせないのは、映像のクオリティの高さだろう。撮影班がいい仕事をしている。ピアノ1台で過不足なく添えられる音楽も素晴らしい。作家が撮ると奇をてらった表現が映画を台無しにしがちだが、詩人が撮るとこうも静謐な映画になるのかと唸らせる、実に詩的な佳作だと思う。
ただし、ラスト15分までは。
気持ちと時間は同じ。しかし、場所を隔てて結ばれる情交は無理がある。思い切りブルーの色調に振って、2人の情欲の昂揚に統一感を出そうとしているのは分かる。フィルムをブルーにするのなら、いっそブルーフィルムばりの激しいクライマックスにしてもよかったのでは? もちろん理想は直接の「まぐわい」だ。トリックは蒔田光治か伊坂幸太郎あたりにお願いして。
この濡れ場とエンディングだけに森山直太朗の歌が挿入されるのにも違和感を感じた。とくにエンディングテーマの陽気な曲調は、せっかく繊細に積み上げてきた映画をぶち壊している。どうせぶち壊すなら、ラスト15分の濡れ場そのものでやってほしかった。
兎 - 野生の闘牌 - THE ARCADE 山城麻雀編
このゲームに出会うまでは、ゲームセンターの麻雀はクズだと思っていました。リーチは一発でツモるし、エロいのが目的ならばそれでもするのでしょうが、そんなものに没頭するほど性欲が強いわけでもなし、そもそも2人麻雀なんてつまらない。
しかし、このゲームを見た途端、虜になってしまいました。
なんと言っても、「カッコイイ!」のです。
イカサマ麻雀には変わりありません。相手の待ち牌が分かるキャラも居れば、リーチを数巡以内にツモ上がるキャラも居る。しかし、それを「キャラ固有の能力」とすることで、イカサマに制限を設けています。どのキャラを使うかはプレイヤー次第。相手も能力を使ってくるので、上手く使わないと勝ち抜けません。
能力以外の点では敵味方は平等で(ボスは能力が異常に強いですが)、大負けすると勝負手が入る、というのも敵にも味方にも起こります。
ある程度勝ち越していい気になって浮かれていると、「ツモ!国士無双!」なんて喰らって簡単に逆転されてしまったりします。逆に、大負けしていても最終局に大四喜・字一色上がって逆転、なんてことも起こりえます。
普通の麻雀を楽しみたい人には向いていないでしょうが、ゲームとして楽しみたい人にはなかなか良い出来なのではないかと思います。
リーチや鳴きの際に軽くカットインが入る。
キャラの能力発動時や、上がりのときにもカットイン。
倍満以上の上がりだと、派手なエフェクトのカットインが全キャラに用意されています。
これらが上手く静止画を使って構成されており、下手に動きがあるよりも非常に劇的な演出効果を果たしています。
また、効果音の使い方も上手い。
能力発動の重低音や、倍満以上の上がり時の衝撃音など、カットインを更にドラマティックにしています。
以前アーケードの移植ではないもの(サミー版)が発売されていたのですが、やはりアーケード版の方が演出効果では優れています。
ただ、アーケードそのままの移植ということで、「やりこみ甲斐」という意味ではサミー版のほうが優れていると思われます。
TVアニメーション「たまゆら~hitotose~」EDテーマ::神様のいたずら(初回限定盤)(DVD付)
歌詞に描かれている情景そしてストリングスを中心としたアレンジメントが、
エンディングテーマとして使われている『たまゆら〜hitotose〜』の
ストーリーや主人公の生い立ち、広島・竹原の風景と楽曲がオーバーラップし、
さらには自身の十代の時の経験とストーリーに対する憧憬の念も重なってか、
楽曲を聴いて久々に胸が熱くなりました。
あと、大江千里氏が今でも活躍されていらっしゃることに安心しました。
AAA 3rd Anniversary Live 080922-080923 日本武道館(スペシャル盤) [DVD]
50年の人生、いろいろなジャンルの音楽に接してきましたが、この年で若かりし頃の肉体や精神を思いださせていただき、1枚の音楽DVDにこれほど心躍らされたのは記憶にありません。いまの草食系と呼ばれる若者からは想像もつかないアクティブ・ポジティブ・熱い熱い思い心を持ったメンバー達。個々の個性が秀逸にからみあってみごとに「アーティスト」としてのグループが完成形として出来上がっています(テクニックではなく)。80年後期バブル絶頂期のZOOの時代から引き継がれているエイベックスの血沸き肉踊る寸分の狂いもなく刻まれるリズミにのって踊る肉体。手加減せず少年のように走りながらも信じられないほどに突き抜ける高音域のボーカル。エグザイルなどの重厚感とは違う、軽快に楽しさと明るさを振りまく振り付け。その裏に彼らの影武者として完璧なフォローを行うスタッフ様のとことんまでダンスと歌を追求する執念のような姿がみごとに浮き彫りにされてゆきます。武道館コンサートライブの最初から最後まで、ほぼ完璧に現場に居合わせていられるような臨場感あふれるカメラワーク。MCの途中で日高光啓君から紹介された「MAX松浦氏」についても非常に興味を持ち、松浦社長の人生を掘り下げて接する機会を得ることができました。1万円でも買って損しない素晴らしい作品でした。過去賞賛レビューされた方々にも感謝。人生での出会い同様、良い音楽との出会いも最高に人生を豊かにしてくれますよね。
アヴァロン Avalon [DVD]
ネトゲ、オンラインゲームをプレイした事のある全ての人に捧げたい作品です。
実際にプレイした事のある方なら、すぐに感情移入できるでしょう。
そして仮想世界と現実の違いについて、あらためて考えることになるはず。
押井監督の実験作とも呼べる作品で、その映像美と世界観には圧巻させられます。
アヴァロンはケルト語でリンゴを意味し、アヴァロン島はイギリスの伝説の島。
単なるSF作品として視聴するのでは無く、監督が伝えようとした事を感じ取って欲しい。