テオ・アンゲロプロス シナリオ全集
書名の通り、初期の『再現』から『永遠と一日』までのアンゲロプロスの映画のシナリオ全訳をまとめた本です。特に解説やおまけのエッセーもなし、シナリオだけです。でも、素晴らしい。
実際に映画で字幕をつけている作家の池澤夏樹さんによるものですが、映画では画面に入りきらないか、入ってもこちらが全部把握しきれないところなど、この本で完璧につかめます。たとえば、代表作『旅芸人の記録』でエレクトラが独白で歴史的経過を述べる独白部分などを文字で負うことができます。アンゲロプロスの映画を見て、ギリシャ史を勉強しつつ、あの映画が何を描き、何を訴えているかを追うのに必須アイテムです。
といっても、そこまでアンゲロプロスにのめり込む人が何人いるかですが、この本が出版できること自体、日本という国は政治はともかく文化的には大した国だな、と思います。ヨーロッパの国でも、もちろん、池澤さんという素晴らしい方のおかげではありますが。
ユリシーズの瞳【字幕版】 [VHS]
ギリシャ史からバルカン史へ。アンゲロプーロスの旅は重くまだまだ続く。
映像のスペクタクルは相変わらず素晴らしいですが、安易なカタルシスは一切なし。
やっぱ、彼は映画館で観ないと駄目だ。
永遠と一日 Blu-ray
待望のブルーレイ化バンザイです!!
長らくDVDが絶版になっていたので嬉しい限りです。
アンゲロプロス監督が亡くなったからなのかな。。
いずれにしても名作が綺麗に蘇ってくれることは嬉しいこと。
紀伊国屋さん、頼みますよ!!!!
エレニの旅 Blu-ray
まずはBD化、ありがとう紀伊國屋さん。だけど、このタイミング(アンゲロプロス逝去直後)でのリリース発表というのが、ちょっと心配です。と言うのも、(言い方はよくないですが)この機に乗じてのリリースならば、BDとしての完成度に不安が残るからです。しかし、紀伊國屋さんの、これまでの製品作り(画質、ブックレット、タイトルラインナップ等)には、概ね満足(価格以外)しているので、星五つ献上します。他作も含めて、巨匠が残してくれた大切な宝物の誠実な商品化を期待しています。
アンゲロプロス―沈黙のパルチザン
今年2008年はオリンピック・イヤーだ。もう4年も経ったのだなあ。アテネから。
2004年アテネオリンピックの記念でもあるまいか、紀伊国屋書店からアンゲロプロス映画全集がDVDで出されたことは大いなる快哉を叫んだものだ。
1996年に刊行された本書『アンゲロプロス―沈黙のパルチザン』は、アンゲロプロスファン必携の1冊であり、いまだにその資料的価値は古びていない。
巻末の100ページ超に渡る『旅芸人の記録』の全ショット採録は、この大傑作を愛するものには繰り返し参照できるものだ。
『永遠と一日』『エレニの旅』以前の『ユリシーズの瞳』までカバーしている記述は得がたいものであるし、アンゲロプロスのプロフィールが年代順に描かれる「自分史」は、そのまま現代ギリシャ史である。我々アジアの民にとって縁遠い世界であり、なかなか知る機会もないが、これを読むだけで彼ら現代ギリシャ人の過酷な道行が一望できるのだ。こうしたヒストリーを知って、作品を見ることは大変意義深いことだと思う。
アンゲロプロスの映画作品は、そのまま現代史のドキュメントでもある。
その後、これ以上に熱いアンゲロプロス本は出ていないようだ。