犯罪
あたかもヘミングウェイを読んでいるかのような研ぎ澄まされた簡潔な文体だが、貧困、不運、不幸な人生ゆえに犯罪を犯さざる負えなかった生きざまが重く、そして切々と伝わってくる。 しかし著者の温かみのある視点のせいか、話のトーンの割には読後感は悪くなく、久々に心を揺さぶられたミステリー短編集である。
ピショット [VHS]
80年代初頭のブラジル・サンパウロに生きるストリート・チルドレンの苛酷な運命を描いた映画。フィクションというには余りに生々しいリアリティを帯びたストーリー・映像が続くあたり、近年日本でも公開されたインドネシア映画の「枕の上の葉」を髣髴とさせる。悲惨な実態ではあるが、全篇を通じてバベンコ監督の子どもたちに注ぐ愛情がひしひしと伝わってくる。
バチカンの嵐 [VHS]
スーパーマンでの三枚目的なクリストファー・リーブではなく、二枚目でかつ野心的なクリストファーを楽しめます。
ストーリーは、思っていたよりも結構おもしろいと思います。
どこかに「神の救い」に通じるような会話があり、心が和む瞬間もあります。
実際のクリストファーは熱心な信者ではなかったらしいのですが、ここでは牧師を演じています。衣装もさることながら、十字架とクリストファーの紳士な表情がとても合います。
Good Luck
基本的には「チーズはどこへ消えた?」と一緒です。
でもその内容はずっといいです。
ただ単に自分で何かを行動するということだけでなく、何が必要かを考える判断や、人(精霊?)に接するときの態度や姿勢も表れています。
最後に準備を万全に整えたものだけが、誰にでも平等に与えられているチャンスを生かすことができるというところも物語として綺麗にまとまっています。
自己啓発物が流行っていて具体的に力になれる本も多いですが、こういう抽象的な本もいいですよ。
表紙も綺麗ですが、話自体もすごく綺麗です。
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」
カラヤンらしい、豪華スタッフによる緻密で高度な仕上がりの作品ではあるが、生の舞台を彷彿とさせてくれるような、音楽の息吹・熱気・勢いなどが薄い。 歌手陣は、みな流石と言える歌唱ぶりではあるが、カラヤンの指揮に忠実に従って歌っている、という域を出ておらず、感動が伝わってこない歯がゆいものであった。 また、大編成のオケを使っているのか、或いはカラヤンの意図によるものなのか、オケのボリュームが、鬱陶しいくらいに大きい所が幾つか有り、思わずトゥリオ・セラフィンが振ってくれていたらなあ、と思った。