花物語 下 (河出文庫 よ 9-2)
花物語の下巻は、後半の19編を収録します。花物語も後半に入ると、ストーリーも深化して時に少女小説の枠を越えたような作品が出てきます。形式も著者に宛てた投書の形(アカシヤ)、樋口一葉風に文体をまねたもの(日陰の花)といった工夫も見られます。特に「ヘリオトープ」は散文詩のような美文調でまとめた掌編です。末尾に大正12年10月14日と日付があります。大正12年9月1日の関東大震災から1ヶ月半後の作品で震災の影響が垣間見られます。
下巻のエピソードでは、さらに女同士の恋愛感情に踏み込んだ作品が出てきます。「アカシヤ」「日陰の花」「黄薔薇」「スイートピー」など。就中、「黄薔薇」は、古代ギリシアの女流詩人に言及して、まさにその世界を描いています。どのエピソードも悲しい結末に終わっており、やや苦い後味を残しますが、いずれも少女小説を超えてその先を行く力作です。
花物語をはじめ当時の少女雑誌というと、中原淳一の挿絵と決まっていました。あとがきによれば、河出文庫版の表紙絵は、中原淳一のイメージに囚われずに読んでほしいという意図からこのような表紙絵を採用したとのことです。これは良い試みと思いました。
女学生手帖―大正・昭和乙女らいふ (らんぷの本)
大正昭和の女学生の暮らしや文化を、女学生にスポットを当ててこれほどユニークに且つわかりやすく書いた本は、今まで無かったのではないでしょうか。女学生とは?からはじまって当時好まれた髪型や、女学生達の一日をセピア色の写真とともに紹介しています。女学生必携マナー集など現代の私達が見ても参考になります。人気の小説や、挿絵、写真や乙女の悩み相談などさまざまな角度で当時の生活を眺めることが出来、当時の雰囲気、息遣いまで聞こえてくるような気がしました。
弥生美術館館長でいらっしゃる古賀三枝子さんの女学生時代の思い出話は、とてもリアルにその当時の生活を感じることが出来ました。
多感な少女達だからこそ持ちえる、やわらかな感性に満ち溢れている一冊です。