日本探偵小説全集 (3) (創元推理文庫 (400‐3))
大下宇陀児と角田喜久雄の作品集。両者とも長編が1つといくつかの短編が収録されています。
大下宇陀児については、(犯罪)心理描写を得意にしているようですが、今回収録されている作品では出て来る女性の登場人物が皆低脳に近い描かれ方をしておりあまり好きになれませんでした。
このあたりは時代背景もあるのでしょうか。
逆に角田喜久雄の作品については『高木家の惨劇』を筆頭になかなか面白く読めました。
特に『高木家の惨劇』は、それまで日本になかった本格物を書いてやろうと意気込んでできたものだけにわずか二十日で書き上げられたとは思えないほどなかなか良くできています。
それ以外にも『笛吹けば人が死ぬ』といった印象的な短編もあり、トリックだけではなく人物描写・情景描写においても力を持っていた作家だということが分かります。
横溝正史の金田一ものと比較されたことがありながらも圧倒的に知名度では差がついてしまった感がありますが、日本のメグレのような加賀美課長が活躍する本格長編推理小説に触れてみてはいかがでしょうか?