小説 王陽明〈上巻〉
王陽明の生涯を読んでいると、何とも言えないやるせなさがこみ上げてくる。陽明は、誰よりも朝廷に忠誠を尽くして、功績をあげた人でありながら、その朝廷に殺されたといえる人だからだ。
陽明はその生涯で三度兵を指揮した。朝廷でも手におえなかった札付きの賊徒がはびこる騒擾の地へ放り込まれ、電光石火の奇襲戦法によって、次々に賊徒の巣窟をつぶし、寧王という藩王の謀反をわずか14日で鎮圧した。そして生涯の最後に、病躯をひきずりながらも瘴癘の地の反乱鎮圧に赴き、その地を鎮撫した。しかし、それに対し、朝廷は恩でなく仇でむくいた。陽明の功をねたんだ奸臣らは、寧王の謀反鎮圧という陽明の功を横取りしただけでなく、逆に陽明の弟子をとらえ拷問にかけ、陽明を謀反の首謀者に仕立て上げようとしたのだ。さらには何の罪もない良民を、寧王の残党としてとらえ殺し、それを自らの手柄とした。もはや正気とは思えない悪魔の所業である。王陽明の生涯は、我々に、人間とはかくも高潔に生きられるのだと示す反面、人間ここまで腐れるのかとという負の面をも示し、そしてどちらも人間なのだと教えてくれるのである。
この小説は、作者独自の創作はあまりない。小説としては、もっと創作をいれた方が面白かったかもしれないが、王陽明の生き様を如実に我々の目の前に蘇らせてくれていると思う。
太公望―殷王朝を倒した周の名軍師 (PHP文庫)
周の名軍師、太公望の活躍を描く作品。
漫画の「封神演義」が好きで、興味を持った。
史実とフィクションだから当然違うこともたくさんあるのだが、
太公望が年配なのがショックだった。
とは言え、殷を討つために様々な策を弄する太公望の存在は歴史に大きく残るものだと改めて感じさせられた。
一冊で読めるので私のようなビギナー向けかもしれない。