絶対にゆるまないネジ (中経出版)
ゆるまないネジとは、ゆるまないナットの事だったんだと読後わかりました。
世の中に、ネジの使われていない場所はないくらい、ネジは使われており、それだけに、ゆるまないネジは、今現在も、これからも無限の可能性を秘めているように思います。
大手の会社がハードロック工業を相手に選ぶ時に、きちんとした工場のラインを持っているかどうか確認しようとした時に、工場の内部を見せると、せっかくの契約がだめになってしまうので、工場内部を見せないようにし、接待漬けでごまかそうとした、この会社の黎明期の営業が中小零細企業らしくて、非常に面白かった・・・。
先端的な技術や資本も資金もないけれど、無限の創造性と売り込み先企業の中核的人物への積極的営業は、ハードロック工業の二人の人物により役割分担されていたことが良くわかった・・。
ホンダの創業期にも、数人の人物により、役割分担されて急成長を遂げたのと良く似ている。
結果的に、中小零細の企業の発展は、無限のアイデアを生み出し続ける人と決して目標をあきらめない人がいる事だと言う事が良く分かる本だ・・・。
絶対にゆるまないネジ―小さな会社が「世界一」になる方法
絶対にゆまないネジ(正確にはナットの方に秘密がある)を発明したハードロック工業社長の本。「絶対」というのは大げさではなく、ねじが緩む原因であるボルト軸直角方向の荷重を抑えるくさびの原理が働く構造になっており、これが米国の学会論文を通じて紹介されて国際的な認知度も高まったという。
読みやすい本だ。多少力は入っているが、要点は箇条書きになっていて手際よく整理されている。アイディアによって差別化を図るという主張は一見ありきたりに思えるかもしれないが、ここでいうアイディアとは決して突拍子も無いようなものだけではない点に注意したい。つまり、ねじのようなローテクで汎用的な製品であっても突き詰めていくことで差別化は可能であり、その理由として「世の中の全てのモノは常に『不完全』だからです。当然、そこには必ず改良の余地があります」と、著者は断言している。
創業者として修羅場を潜り抜けてきただけあって、経験に基づく実践的な記述が多い。「よい商品だから売れるとは限りません」と繰り返し述べ、中小企業ほど営業は重要であり、中間業者に販売を任せる場合でもエンドユーザの声を吸収することの重要さも強調している。また、企業規模の小さな会社が全ては出来ないことを認めた上で、製造を他社にお願いしたり大手の品質管理方法を活用するという協調を行った経験についても触れている。
近年、多くの日本企業が海外で知的財産の侵害に遭っている。この著者も特許申請の不備で失敗した経験があり、近年はコピー商品の登場にも直面しているようだ。そこで、特許出願の工夫や継続的な改良を行って対抗しているという。また、お金儲けは会社成長の手段であって目的ではないという信念も披露されている。
尚、私が買った版には、ハードロックナットを通したストラップ付きのねじが一緒になっていた。本書を読みながら時々これをいじり、「なるほど、たいしたもんだな」と実感した。