都筑道夫 ポケミス全解説
著者が海外ミステリについて述べたものは、どうしてこんなに面白いんだろう。
「死体を無事に消すまで」も、とても面白かった。
多分、著者が心底海外ミステリが好きだったからなんだろう。
著者の嗜好は、けっして本格ミステリではなかった。
どうも、スパイ・スリラーや怪奇小説や、そしてフレンチ・ミステリに著者のアンテナは向いていたようだ。
もちろん、本格は押さえておいてなのだが、それは最低限度に、という感じがしてならない。
ボンド作品、ソロ作品、その他のスパイ・スリラーなどについての熱い文章と比べると、どうしても本格ミステリについての文章は醒めているように見える。
それはもちろん、作品の紹介のし易さ、し難さ、というものが関与していたと思う。
しかしそれ以上に、やっぱり著者は好きだったんだよ。
本書を読んでも、その著者の嗜好、アンテナの方向は、よく分かる。
そして、こういうものを一冊にまとめて出版してくれたことに、著者のファンとして感謝したい。
著者が若く、ミステリに対する情熱に溢れていた当時のものが、こうやってまとめて読める。
しかも、海外作品についてのものである。
思えば、ポケミスは広いジャンルのミステリをカバーしていたんだなぁ。
今でも刊行は続いているが、本書収載の作品群を読破すれば、もうそれ以外のミステリを読まなくても、ほとんどのジャンルを制覇したといえるかもしれない。
黄色い部屋はいかに改装されたか?増補版
早川のポケミスと同じ大きさで出てきたのには驚きましたが、晶文社版になかった評論も付いて内容的に充実してます。私も全面的に納得の評論ばかりとはいえないですが、本格ミステリに興味のある人、必読の書だとおもいます。
ちみどろ砂絵・くらやみ砂絵―なめくじ長屋捕物さわぎ〈1〉 (光文社時代小説文庫)
本シリーズは、著者の年齢による衰えか、はたまたその情熱の衰えかは分からないが、次第に中身が薄くなる。
しかし、そのシリーズ第一作と第二作の合本である本書は、著者の意欲満点の時期のものであり、本格マイントあふれる傑作である。
著者が信奉する綺堂「半七捕物帖」にならって、江戸の四季や風俗を織り込みながら、しっかりとミステリになっている。
そして、のちにはセンセーとマメゾーばかりが活躍するようになってしまう長屋の連中が、それぞれの特技を生かして、みんなで活躍する。
つまり、グループ探偵ものにきちんとなっている。
これが、実に楽しい。
それぞれの特技を生かした活躍の場を与える、というのは、口で言うのは簡単だが、ミステリとしての完成度を保ちながらという制約のもとでは、なかなかに難しい。
リーダーとしてのセンセーの能力が、本書では十分に発揮されている。
そして、ミステリとしての完成度、意外性もともかくだが、本書には江戸が存分に描かれている。
巻頭の鎧の渡しから、祭、下町、花見等々、江戸の四季折々が、鮮やかに描写されている。
このあたりも、シリーズがすすむと薄くなるのだが、本書では、まさにヴィジュアルである。
怪異を信じていた時代を背景に、その怪異にロジックで立ち向かうという、まさに捕物帖のお手本だ。
語り口も、そしてその中に仕込まれた遊びも、シリーズ中では本書が最高である。
殺人狂時代 [DVD]
主人公は結局一体何者だったんだ??と観終わった後に考えてしまう程楽しめた。仲代さんのこんな演技初めて観ましたね。最高。映像はモノクロで、セットや衣装も洒落ている。特に病院内がすごい。ダリみたいで時計じかけのオレンジのバーみたいな感じ。それと主人公のつけてる時計がまたいいですねー。ストーリー、設定だけで考えると結構ヘビーでタブーなものになるのを、役者の演技や台詞でちょっとトボケた感じにして、重たくないようにしてるように感じました。これはおもしろい映画です。