不器用
本書は、前著『私は、産みたい』を出してからの3年間のできごとを中心に、政治家野田聖子誕生のいきさつや、今後の抱負も明らかにした語りおろしです。
前著より詳しく不妊治療に言及していますし、鶴保庸介議員との離婚のいきさつや鶴保氏の反論もきちんと載せていますので、ワイドショー的興味で読んだ人も満足できる内容です。
私が注目したのは、はじめての衆議院選挙に落選した後の候補者生活と、それと民法改正に向けた意欲の強さです。
最年少県議会議員から衆議院選挙に挑んだものの、落選の憂き目をみた後、野田氏は来る日も来る日も、戸別訪問の日々を送りました。朝8時から夜6時まで名簿を頼りに1軒ずつ回って歩く。後援会名簿はけっこういいかげんで、塩を撒かれたり説教されたりもしました。夜は夜で支援者との飲み会に出席し、胸を触られたりして悔しい思いもたくさん経験します。
また、野田氏は民法改正に強い意欲を持っています。
「日本の法律は、いまだにお上が国民をコントロールするためのテキストみたいな性格が強い」と野田氏は考えます。成熟した国家として、主権者である国民が自分の人生をいろいろな選択肢から選べる方向に持っていかなければならない。そのために民法を改正したい。なかでも選択的夫婦別姓制度をぜひ導入したい。それが、あと10年と決めた自分の政治生命の目標とのことです。
現役政治家の本が選挙に向けた宣伝であることは間違いありません。まして、いつ衆議院が解散してもおかしくない状況ですので、本書を政治的パフォーマンスと切って捨てることもできるでしょう。
しかし、私は本書の中にスッピンの野田聖子が見えました。かなり赤裸々に自身を語っていると感じます。それが計算されたものだったとしても、それはそれで、たくましくなった野田聖子の今後の可能性に期待することにしましょう。