私小説―from left to right (ちくま文庫)
何度も何度も読み返してしまう本。
私は筆者のように、少女時代にアメリカに渡ったわけではないが、アメリカに住むことを選んでしまった日本人のうちの一人なので、あまりにもこの独特の物悲しさとか、孤独とかが手に取る様に分かってしまう。
私の言う、「アメリカの孤独」は日本で住む日本人に伝わらない事が多い。でも筆者は、その文才で上手く時にポエティックに表現して痛い程のその日米の文化の違いを書きちりばめる。
アメリカにいればいるほど筆者の心と同調してしまって、最初読んだときより今のほうがもっと味わい深く、そして涙が出て来るくらいに美して悲しい。
本格小説〈下〉 (新潮文庫)
アメリカで成功した太郎、結婚したよう子とその夫。あやうい関係が向かった先、それはひとつの時代の終焉でもあります。
ながいながい物語、入れ子式になった3人の語り部はそれぞれその役目を終えました。
小説は読者もまた4人目の「語り部」として入れ子にしてしまいました。
日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
いくつかの点で反論がある。先ず「普遍語を現地語に翻訳する過程で書き言葉は生まれる」というのに日本語は該当しない。万葉仮名は倭歌を如何に漢字で表現するかという悪戦苦闘から生まれている。最終的には仮名が生まれるまで待たねばならなかったが漢字かな混じり文という日本語の書き言葉は漢文を日本語に翻訳する過程で生まれたのではなく倭歌を表現するために生まれた。
次に国語として成立した時期を明治の文明開花期だというのもおかしい。この本では近代日本文学を奇跡とたたえるがそれ以前の膨大な日本文学を奇跡と称えないという誤りにつながっている。伊勢物語、源氏物語、平家物語、方丈記、徒然草、今昔物語なども世界的な文学作品が生まれたのは漢字かな混じり文が成立していたことが大きい。この次期に国語が成立していたと考えないと辻褄があわない。著者が日本は英仏より遅れた国だという先入観に捉われているための誤りと思うが日本の古典文学の蓄積は質量ともに英仏をはるかに超えている。
三つ目に日本が明治時代に植民地化されなかった幸運を力説するのも間違っている。日本と朝鮮、ベトナムとの違いは日本が幕末期に植民地化されなかったことにあるのではなく、AD900年ごろに既に漢字かな混じり文という書き言葉を成立させ、膨大な古典文学が蓄積されているところに或る。これに対し朝鮮、ベトナムでは自国語の独立を守れず、書き言葉が最終的な形で成立したかどうか未だはっきりしない。現に両国とも殆ど独自の文学作品を残していない。
著者が「日本語は漢文の現地語に過ぎない」と繰り返し述べている点ほど大きな誤りはない。日本語に対する無知をさらけ出していると言える。恐らく漢字を使っていることを指しているのであろうが漢字は日本語(大和言葉)の表意文字であり、大和言葉の語幹を表すために使われているに過ぎない。例えば
君がため春の野に出でて若菜摘む我が衣手に雪は降りつつ
この和歌は100%大和言葉であり、中国語的要素は全く含まれていない。よく中国語の現地語に過ぎないと言えたものである。
日本語の名文家として評価の高い著者でさえこれほど日本語に対して偏見と誤解を抱いているというところに日本語の危機がある。日本人が日本語のことを知らないと言う事実ほど悲しいことは無い。
中卒の組立工、NYの億万長者になる。
とりあえず、タイトルに惹かれて手に取りました。
第4章にも書かれてますが、著者は2006年にビジネスから身を引いています。
そのためか、とてもフェアで適度に客観的な内容になっていると感じました。
合間合間にある「億万長者の教え」は、ビジネスをしている人達へ向けた、短いながらも啓発色の濃いコラムです。
たしかに‘ため’にはなるのですが、本文との温度差を感じる内容なので、もう少し、横書きにするとか枠でくくってしまうとかして欲しかった気がします。
(でもそれは私がこの本を、自己啓発本としてではなく、大根田氏の半生伝として読もうとしたからだと思います。)
本文後半、「キャリアの総仕上げ」で手痛い失敗を経験するところがフィクションでない、現実として存在する大根田氏を感じ
それまでの本の内容や、その後の氏の行動が説得力のあるものとして心に響いてきました。
「本格小説」読んでみようと思いました。
そして、その後にまた本書を読み返してみたいと思います。
本格小説 上
読書好きな上司に進められて読みました。話が見えるまで苦労しましたが、後半は徹夜で一気読みでした。最後まで読んでまた最初に戻りたくなる本です。時代背景独特の我慢する日本人、差別、そして切ないほどの一途さにすっかり飲み込まれ、2~3日引きずってしまいました。こんなにどっぷり嵌った小説は久しぶりです。色んな人に読んで欲しいです。今でも思い出すだけで切なくなります。