マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫)
20世紀イタリア文学を代表する文学者、イターロ=カルヴィーノの名作の新訳です。
1968年の安藤美紀夫さんの旧訳は、マルコヴァルドさんの四季 (岩波少年文庫 2084)
硬いところがあり、私は新訳の出ることを期待していました。
関口氏の筆は、工夫された丁寧な訳出です。
おりしも英文科学雑誌Natureの7月19日号において、イターロ=カルヴィーノのSF著作
CosmicomicsThe Complete Cosmicomics (Penguin Modern Classics)
が科学的に正しい考察に基づいている点を評価しています。
この作家は多面的ですが、その手法は「マルコヴァルド」などにみられる寓話的手法がひとつの核になるでしょう。民話を収集した作家の真面目と言えます。
なぜ古典を読むのか (河出文庫)
イタリア人作家による、古今東西の古典を自由自在に論じたエッセイが32篇。表題「なぜ古典を読むのか」という、カルヴィーノらしい軽妙なエッセイが巻頭に置かれ、その後は「オデュッセイア」、オウィディウスから「ロビンソン・クルーソー」「パルムの僧院」、バルザック、トルストイ、そしてコンラッドやヘミングウェイ、ボルヘス、レーモン・クノーまで、取り上げられている作家・作品はさまざま。ガッダ、パヴェーゼなどイタリア人作家を取り上げた文章も比較的多いのが、イタリア文学好きには貴重です。
訳者あとがきによると、これらの文章はもともとイタリアのエイナウディ社の文学叢書のまえがきとして書かれたものが多い、とのこと。その訳者は須賀敦子さん。本書でもすばらしい訳文を堪能させてくれます。
カルヴィーノ好き、そして文学を愛する人必読の、贅沢なブックガイドです。
宿命の交わる城 (河出文庫)
1980年の単行本を世田谷の図書館で借りて以来、20数年ぶりに
読むことができました。カルヴィーノが繰り出すタロットカードの
物語が読んでいる私を城の中へ引き入れてくれます。
ただ、残念なのは、タロットカードの文様が小さくて、本来の迫力に
欠けてしまうところです。
木のぼり男爵 (白水Uブックス)
椎名誠の短篇「鉄塔のひと」に抱いたのと似たような興味を持って読み始めた。制約された状況下において具体的にどのようにして生活を送るのか。なんとなく特定の木を定めてそこから一歩も動かないのかなと思っていたら、そういう訳ではなく地面に降りなければセーフという「ルール」を主人公は設定しており、それこそテナガザルのように縦横無尽に木々の間を移動する。またサバイバルに固執しない融通加減も興味深かった。寓話的雰囲気や18世紀という時代設定を考慮したため、かように訳文を読みづらくしているのかと勘ぐったものの訳者あとがきによれば、初めての翻訳作品故不得手な面云々とありげんなり。かなり読むのに難儀する文章である。読了後眼球が3センチぐらい埋没するような疲れにとらわれた。もともと作者の狙いがそこにあったのかも知れないが終盤のフリーメーソンが出てくる件から退屈になる。
イタリア民話集 上 (岩波文庫 赤 709-1)
イタリア旅行後、イタリアについて更に知りたいなと思っていた矢先に
書店で発見、早速購入し読んでしまいました。
本書上巻には33話が掲載されており、登場人物の勇気や叡智を称賛し
幸福を手にする結末が多いので、絵本を卒業した子供に読み聞かせるのも
楽しいのかなと思います。ただし、多少話に毒が含まれていたりもします。
幸せを手にした主人公がその後ぽっくり逝ってしまったりするので・・。
世界の民話を知りたい方や、イタリアについて興味がある方はイタリア人の
気質をうかがい知る一つのアイテムとして手にするのも良いのではと思います。