徹底比較! 「新エネルギー」がよくわかる本 (PHP文庫)
今まで利用していたエネルギー(原子力発電や、火力発電など)から、これから期待される新エネルギー(宇宙太陽光発電や、海流・潮流発電など)が、おそらくほとんど網羅された本です。本は全部で5章あって、第1章、2章はエネルギーについて。第3章は発電能力やコスト、技術レベルについて。第4章は発電と送電の分離など新エネルギー普及への道。第5章は世界のエネルギー政策について書いてあります。雑学本だが、かなり詳しく、内容も濃いので、エネルギー問題に興味がある人はぜひ読むことをお勧めします。
原発はいらない (幻冬舎ルネッサンス新書 こ-3-①)
最後のQ&Aの章が興味深かった。
・放射性物質の基準値以下の農作物や他の食品の出荷停止措置について、
生産地毎の出荷停止は区分があまりにも大まかすぎて生産者にとっては不条理であると言われています。汚染度を生産者毎に明記すべきという意見です。その上で、若年層と高齢者に対して放射線に対する危険度を明記した上、それを食べるかどうかは消費者が自分で決めるべきという意見で、この意見は私はとても納得しました。放射線に対する危険性の評価は、専門家の間でも開きがあります。判断基準を最終的な消費者に置くという考えは重要だと思います。
・電力不足の問題について、小出さんは、原発の運転停止した分の
目減りした発電容量は、再生可能エネルギーその他で補填することを考えるより必要最小限の使用量に押さえることを考えるべきと答えています。実際に電力不足であるかどうかは怪しいが、発電量が減るならば少ない電力使用量で生活すべきということです。具体的に言うと、70年代頃の消費電力量で充分と言っています。これは、一般的な考えではないと思いますが、ここも改めてこの本で読んでいて、確かにそうだなと感じます。他の著書の方がこの論点は詳しく書かれていますが、ウランの資源量や地球上の総熱量の観点からも、世界中の人がアメリカ人のように浪費することは原子力を利用しても不可能だしすべきでないということです。
村上春樹さんの講演の中の「非現実な夢想家」という言葉を引いています。私は、実は小出さんはかなり現実的な地に足の着いた方だと思います。原発推進の人たちの言うエネルギーセキュリティーの問題とか、電力不足の問題というのは、本人たちの言う「現実的な対応」という言葉とは裏腹に、実はリスクや経済性の問題を自分達だけの抽象的な世界に投影しているような印象を受けます。
小出さんの論はある種の理想論に見えますが、ひとつひとつは実は現実的な立脚点に立っているのではと感じました。
原発社会からの離脱――自然エネルギーと共同体自治に向けて (講談社現代新書)
本書の感想は以下二点である。
一点目。宮台が指摘するライフスタイルとソーシャルスタイルの違いという点が勉強になった。日本では環境思想が、ロハスというような形で個人のライフスタイルに収斂してしまい、大きな社会の動きにならないという指摘は大いに腑に落ちるものがある。ソトコトというような雑誌を読んでいても、結局は「環境に優しそうなグッズの購入」という話になってしまう点に違和感を覚えたことも思い出した。
二点目。本書で初めて飯田という方を知った。原子力行政の中にいた方が描き出す官僚の姿には説得力があった。また、北欧の電力関係の話も非常に興味深く読めた。
つくづく思うのは日本の大手メディアからの情報では分からない点が多いということである。原子力ムラの中に日本のマスメディアが組み込まれてしまっていることがうっすらと見えてくる。こうなると、僕らはどのように情報を入手し、どのように判断力を養成すれば良いのだろうか。
震災と原発問題を通じて見えてきたものは多いとつくづく思う今日この頃である。
宇宙は本当にひとつなのか (ブルーバックス)
この本を読んでいると、最近の宇宙論は、昔と比べると、随分進歩したものだと思う。この本では、冒頭の「はじめに」から、暗黒物質や暗黒エネルギーについて、非常に興味深いことが語られているのだが、私が「ホーキング、宇宙を語る」などで宇宙論をかじった頃には、暗黒物質は、宇宙が膨張し続けるのか、収縮に転ずるのかの鍵を握る物質程度にしか語られていなかったし、暗黒エネルギーに至っては、その存在さえ知られていなかったのだ。今年発売された本でも、こうした昔の本と五十歩百歩の内容のものがあるくらいなので、本書は、最新の宇宙論を知るには、最適な本だと思う。
さらに特筆すべきは、それが、平易な語り口で、非常に読み易く、分かり易く書かれているということだ。著者、村山斉氏の略歴を見てみると、素粒子理論におけるリーダーだそうなのだが、難解で哲学的なホーキングの本と比べると、えらい違いだと思った。村山斉氏は、宇宙論の素人のレベルがどれくらいなのかをよくわかってくれており、そのレベルまで下りてきて、本当に優しく解説してくれているのだ。
私も、昔と最近を合わせると、何冊も宇宙論の入門書を読んできたのだが、これほど読み易く、分かり易い入門書に出会ったのは、初めてだった。巻末の「おわりに」を読むと、この本は、村山斉氏の四つの独立した講演をテープから起こして、科学ライターの荒舩良孝氏がまとめたのだそうだ。もちろん、講演自体が非常に分かり易いものであっただろうことは事実としても、村山斉氏もその筆力に感謝しているとおり、単純に講演の内容を紙に起こすだけの作業ではなかったはずであり、本来は難解のはずの最新の宇宙論を、これだけ分かり易くまとめ上げた荒舩良孝氏の才能も、称賛されて然るべきだと思う。
新エネルギーが世界を変える―原子力産業の終焉
この本にはエネルギーに関する「目からうろこ」のような話がたくさん載っています。原発がなくても停電はしないこと、自然エネルギーは当面原発の代替にはなりえないこと、原発に当面代替できるのは現状最も効率的な天然ガスを使うガスタービン炉が有効であること、採掘技術の進歩と石油の高騰で天然ガスの埋蔵力は数百年分に伸びていることなどなどです。広瀬隆氏は反原発の急先鋒として原子力寄りのメディアからは徹底的に嫌われていますが、この著書を読めば広瀬氏がエネルギーについて徹底的に調べ上げその脱原発の主張に相当の合理性があることが分かります。ウソや隠ぺいばかりの原子力ムラが忌み嫌う理由もそこにあるのでしょう。一読に値する本です。