当世書生気質 (岩波文庫)
一般的な「文学史」評価では、逍遥が「小説神髄」で示した近代小説の理念を、
作者幼少期の「戯作三昧」の影響で果しえていないというのが定説ですが、
当時の書生風俗が垣間見られそれはそれで興味深いです。
とくに美少年好きの自称硬派学生(ど近眼)の温泉での失態は抱腹ものです。
ちなみに逍遥の衣鉢を継いだ長谷川二葉亭の「浮雲」、最初はどこが言文一致の心理写実証小説じゃい!!
と立腹しましたが、巻を進むうち、その細やかな文章に魅了させました。
よみがえる自作朗読の世界~北原白秋、与謝野晶子、堀口大學ほか~
北原白秋の読む擬音語がおもしろい。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『神父さん』トントン。
『副院長さん』トントントン。
『副院長さん』トン。
ハムレットの恋人オフィリアの台詞を、まるで歌舞伎の女形の声色(こわいろ)そのままの調子で読む坪内逍遥も、じつに興味深い。
与謝野晶子の朗読が、期待に反して、おそろしく一本調子だったのには驚いた。声の上げ下げの場所が、どの歌も全部おなじなのだ。短歌の詠み方には、古くから独特の慣習があって、その枠から外れるわけにいかないのだろうか。
萩原朔太郎の朗読は、棒読みそのものだった。ところどころ、読み落としている語句さえある。
ふと思った。こんにち私たちが、朗読の典型的イメージとして想起する、NHKのアナウンサーやベテラン俳優の、あの声の調子は、比較的最近になって確立した、一種の様式なのだろうか?
今日ちまたでは、ポエトリー・リーディングとか「詩のボクシング」など、従来の詩の朗読の枠を越えて、ライブ・パフォーマンスとして詩を発表する場が増えている。でも、偉大な作者本人が読んでくれるなら、たとえどんなにたどたどしい読み方でも、つい聞き入ってしまう。やはりテクニックがすべてではない。
コロムビア創立100周年記念企画 文化を聴く
文豪たちの自作朗読という、
こんな音源あったんだって感じの超レアなCD。
朗読ってただ読めばいいってものではなく、
演技力、滑舌の良さ、間の使い方といった「技術面」と
その人の個性が出る「声の質」
という2点が重要だと思うのですが、
この観点からこのCDを評価すると
全体の感想としてはかなり良い感じです♪
読み方のうまい朗読もあれば、
余り上手ではないけど味のある朗読もあったりと
楽しめる朗読ばかりです。
また朗読をそのまま楽しむのではなく、
ファンである文豪の声を聞きながら想像をふくらませる
という楽しみ方が出来るのも本品のいいところ!
以下、気に入った朗読者です。
「北原白秋」…一人で6トラックも入ってるだけあって、味のあるいい朗読です。軽く棒読み気味なのですが声の雰囲気が良くずっと聞いていられます。そして途中から入ってくる歌(詩?)を読み方もちゃんと節を付けてて良い感じです。
「与謝野晶子」…何言ってるか分かんないのですが全体の雰囲気はとても心地良い感じです。この声は癖になります!!!!!!
「高浜虚子」「堀口大學」…基本棒読みなのですが、間の使い方が上手いです。
「河井酔茗」「土岐善麿」「釈迢空」「太田水穂」「尾上柴舟」…どこか純邦楽に通ずるような節をつけた読み方は素晴らしいです!
「野口米次郎」… 神社で祝詞あげてるのかってくらいのかしこまった朗読。これはこれで味があります。
「川路柳虹」…下手ではないのですが、ただ音読してるだけといった感じです。
「西條八十」…あまり上手じゃないのですが、人柄が出ている読み方で聴いててほのぼのしてきます(*'ω`*)
「坪内逍遥」…めちゃくちゃうまいです!!!!!!
演技がうまい!!!!!!!
滑舌がいい!!!!!!!!
間の使い方うまい!!!!!
声がいい!!!!!!!!!
ファンになりました(*'Д`)
小説神髄 (岩波文庫)
近代文学黎明期の記念碑的な作品。「そもそも美術(本書中では『芸術全般』を指して『美術』と書かれている)とは」「小説は近代以前の物語文学と如何に異なるか」など、明治中期の文芸思潮がよく分かる作品である。現在に於いては自明である概念が主体なので、新たな発見は無いかも知れないが、近代文学の出発点に於ける叩き台として、歴史的価値の高い書である。長らく絶版状態だったが、重版再開で入手しやすくなった。
ザ・シェークスピア―全戯曲(全原文+全訳)全一冊
すごい本である。まず、個人がシェークスピアを全訳するというのは大変なことだと思う。それが一冊の本としてまとまっている。しかも、全作原文付きである。
一冊になっているが故に、ぎっしりつまり過ぎて読むのに疲れるが、この本の使いかたとしては、まず、他の方の訳を読んで気になったところを坪内訳でも読んで、同じページ内にある原文で確認するというのがいいと思う。
とにかく資料的価値が大である。