Symphony No. 5 in E Minor: Op. 64 (Dover Miniature Music Scores)
冊子はA5版程度の大きさですが、楽譜はそれより二回りくらい縮小されているため読みにくいです。A4版のフルスコアをそのまま縮小していると思われ、音符や楽想標語などの文字も小さいです。冊子サイズから想像される以上に読みにくい楽譜で、CDを流しながら平行して読むのはかなり苦痛です。ただ内容はしっかりしていますし、紙質もよく印刷そのものは綺麗です。したがって小さい音符が苦にならない人はこれで十分と思います。
国内出版社のポケットスコアは単なる縮小コピーでない場合が多く(小さく印刷することを前提で編集しているため)、細かいけれども読みやすいものが多いと思います。Doverは安価なのでフルサイズスコアはおすすめできますが、ミニサイズはあまりおすすめできないと思いました。
チャイコフスキー:交響曲全集
この録音は、カラヤン=ベルリンフィルの正に絶頂期のもので、個々の奏者のテクニック、アンサンブルの正確さ、表現力の豊かさ、音響のパワー、どれをとってもこれ以上の演奏は、正直言って考えられません。音の洪水に身を任せ、薬師丸ひろ子の「ああ、快感!」というセリフ(ちょっと古いね!)を思わず口に出してしまいそうになります。
1〜3番についての評論家の批評は「曲への共感が足りない」などと厳しいものがありますが、一般大衆の私には、「あまり有名でない曲を立派な演奏で聴かせてくれててありがとう!」という感じです。4〜6番については、今さらあれこれいう必要のない名演奏です。
みなさん、素直な気持ちでじっくり聴いてみてください。きっと至福の時が得られますよ。
チャイコフスキー (作曲家・人と作品シリーズ)
知っている事も多かったですが、それでも半分以上は知らない事でした。
決して読みやすい本ではありませんが(その主な理由は、論点別に項目が分けられていなかったり、誰の言葉の引用かが分かりにいためだと思われます)、内容が理解できない、という程でもない。
チャイコフスキーについて理解するために必ず一助となる本でしょう。
ただ残念なのは、チャイコフスキーの手紙の全文、あるいはその大部分の抜粋でもあればと思ったのですが、そういったものはまったく載っていなかった事です。
もう一つは、著者は本来ならばチャイコフスキーの政治観や趣味などについても紹介したかったけども、紙幅の関係上それを断念したと語っているように、どうしてもチャイコフスキーの生涯全般の記述をする、というこの本のコンセプト上、削らなければならない情報が多かったようで、突っ込んだ内容、幅広い内容についての情報はここでは得られない、という事です。何でも書かれた原稿の多くを削られたとか。
チャイコフスキーの宗教、政治、社会、思想、恋愛、趣味、建築や絵画などに対する意見や感想も知りたかったので本当に残念です。
その代わり、曲目情報は充実しています。
Tchaikovsky: The Nutcracker: Complete Ballet In Full Score
大判で非常に見やすく、リプリント版とはとても思えません。買ってから早速全曲版のCDを聴きながら目を通しましたが、カットや落丁もなく、安心して使えます。楽譜内の注釈は英・仏・露の三ヶ国語でかかれており、当然のことながら1曲ごとに台本もしっかりと書かれております。さすがDover版。この勢いで、他の『白鳥の湖』や『眠りの森の美女』の全曲版も出ることを期待します。
チャイコフスキー:歌劇「イオランタ」映画版 [DVD]
同じチャイコフスキーでも、バレエや他の歌劇のようなメジャーさはなくても、優しく美しいお姫様が、苦難を乗り越えて、愛する騎士と結ばれるストーリーは、おとぎ話のようでいて、感覚に対する哲学的な示唆もあって、不思議と魅力ある作品だと思います。歌と演技が、歌手と俳優によって別々なので、盲目の姫君を演じる難しさを見事に役者が演じており、娘を案じて苦悩する父王の歌唱力が素晴らしく、雄大な自然と庭園の美しいカメラワークもあって、楽しく鑑賞できました。80分という時間の長さもちょうどよく、どこか、往年のハリウッド・ミュージカルを連想させ、ちょっとした掘り出し物を見つけたような気分になりました。