ヴェーベルン・コンプリート・エディション
ブーレーズ先生がヴェーベルンに深い愛情を若いころから注いでいらっしゃったことはよく知られています。まさにヴェーベルンに対する愛の結晶とでも言うべき全集です。
この全集を耳にしたときの感動は言葉に言い尽くせないものがありました。特に交響曲の透明感や管弦楽のための6つの小品の細部にまで目の行き届いた演奏はヴェーベルンの理想とした響きではないでしょうか。二十世紀の遺産のひとつといっても過言ではないです。
バッハ:フーガの技法
バッハの「フーガの技法」は1749年から50年にかけて書かれた「未完の大作」であり、未完故に存命中に出版されることはなかった。完成部分は4曲のカノンと15曲のフーガからなっている。特定の楽器を想定しておらず、様々な解釈や編曲で演奏される。「音楽の捧げもの」の姉妹作と考えられる。
「フーガの技法」はバッハの探求した対位法による芸術作品の究極ともいえる名品だ。もちろん未完であることは惜しまれてならないが、ここでエマールは筆の置かれた未完のフーガの最後の一音まで見事な演奏を示してくれる。
非常に落ち着いた音色から始まる。確実にしっかりと地に根ざしたテンポで堅実に音楽の伽藍を積み上げてゆく。様式性の高い楽曲では、その根拠となる付点等のリズムを明瞭に提示し、かつ滋味のある音色で深みを与える。再現される楽曲の一つ一つが趣き深く大切な価値を問いかけてくる。
以前、エマールの録音した近現代もの、そしてシューマンやドビュッシーにも感銘を受けたが、ここでエマールの表現技法の上でも、また新たな地平が拓けたように思える。エマール自身、解説でこの作品への思いが自分の中で長く蓄積されたものであり、グラモフォンとの契約を機にその思いを集中して取り組んだと述べていて、なるほど非常に説得力に富む名演である。録音も確かに柔らかめだけど、個人的には悪くないと思う。
78分以上に及ぶ対位法の世界の果て、突如歩んできた道路が足元から消えてしまうようにこのアルバムは終わる。だがそれが未完ゆえではなく、まるで必然の演出のようにさえ感じられる。演奏が終わったあとも頭の中で美しい楽曲が鳴り続けている・・・
リゲティ・エディション3 ピアノのための作品集
スヌーザーの【The Essential Disc Guide 2004 あなたのライフを変えるかもしれない300枚のレコード】で紹介されている作品(ディスクNo.020)。
リゲティといえば『2001年宇宙の旅』のトーン・クラスター技法を使ったモノリス登場シーンや
進化を促進するワープするシーンでの独特な楽曲があまりにも有名ですが、このピアノ練習曲集も素晴らしいです。
個人的には、このディスクをまったりとしたい時というよりかは、
何かに集中したいとき、心をキリッと引き締めたいときなどによく使います。
超絶テクニックで頭の中がマッサージされるかのようで重宝してます。癖になります。
それにしてもイメージが膨らむ各楽曲のタイトルがかっこよすぎる。
「悲しい鳩」
「ワルシャワの秋」
「金属」
「白の上の白」
「無限の円柱」
「眩暈」
「悪魔の階段」
「無秩序」など
(つぶやき続けると緑の赤ん坊が召還されて天国へ行く方法が見つかりそうです。JOJO第六部ネタですみません。)
リゲティ・エディション6 鍵盤楽器のための作品集
鍵盤楽器は、その機能をどのように利用するかでまったく異なる演奏効果がえられる。ピアノは鍵盤により操作する、ハンマーが弦を叩く打楽器であり、チェンバロは鍵盤により操作する撥弦楽器である。また、オルガンは、鍵盤による操作される管楽器である。本作品には、それらの機能を十分に生かした作品が納められている。チェンバロはバロック時代の楽器と思われがち(きめつけられがち)であるが、本作のなかではつづれ織のような様相をみせる。非常に美しい。また、オルガンは管楽器特有の持続音を活かした持続するクラスターを聞くことができる。従来の鍵盤とは異なるものを聴くことができる。お勧めです。