A Classical Introduction to Modern Number Theory (Graduate Texts in Mathematics)
本書はとても面白い。入門書だが、読む者をWeil予想、ゼータ函数論、楕円曲線の数論などの現代数論の山脈を望む絶景ポイントに立たせてくれる。
本書では代数的整数論と数論幾何に目標を置く、と序文に書かれているが、代数体や代数幾何学の準備で読者を疲れさせることはしない。必要最低限の事項を確認した上で、べき剰余記号やゼータ函数等様々な数論の道具を、円分体や楕円曲線の数論の具体的な問題に適用することに多くの頁数を費やす。だから、扱われる話題は多岐に渡るが、時間を掛けて丁寧に読めば道を見失うことはないと思う。さらに本書に入るための助走となる書物を、という方々には山下純一「数学への旅(2)数論とトポロジー」現代数学社1996の一読を強くお勧めしたい。
読者は、上に挙げた現代数論の巨峰を遥かに眺めながら、演習問題も味わいつつ、ゆっくりと道中を楽しむことができる。特に、ガウス和やヤコビ和の姿を採りつつ、べき剰余記号や相互法則が本書で扱われる様々な話題の底流で重要な役割を果たしている様を、評者は興味深く読んだ。
インターネットで検索すると、多くの大学でゼミのテキストとして取り上げられているのも納得の一冊である。