刑事訴訟法
刑事訴訟法の理解に求められる言葉の定義が丁寧に論説されていて、初学者にとっても非常にわかりやすいと思います。
また、大事な定義付けや、理論については特にくわしく、かつ、順序だてて説明されているので、そのまま論述式試験に書いてもよいと思われます。
現在、多くの新司を目指すロー生が、田口、池田・前田を使用していると思いますが、今ひとつ、試験に使うには自分の言葉に噛み砕いて再構築する必要がある部分が散見されましたが、この本はそのようなことはなく、そのまま試験に使える記述になっていて非常に読みやすく、覚えやすいです。まさしくロースクール時代のスタンダードテキストと言ってよいでしょう。
この点は、おそらく、著者自身が弁護士資格を持っていることと、無関係ではないでしょう。
学説間に争いのあるところは、少数説まであげて、どの説を妥当とすべきか、道筋を立ててくれているので、試験向きだと思います。
池田・前田に見られる実務よりな記述や、白取に見られる自説に偏った記述は見られませんし、判例百選《八版》のページリファレンスも記載されているので、使い勝手もよいです。もちろん、出たばかりなので、最新判例にも言及していますので安心です。
また、著者もいうようにローの授業単位とパラレルに学習できるように全15章に分けられていて、勉強しやすく工夫されています。
あえて厳しくいわせてもらえば、他の本と比べて、一割程度高額な点と、著者自身が、失礼ながら、まだ著名とはいえないので、読む前は『どうなんだこの本は?』と思わせてしまうところでしょうか?
論点中心 刑事訴訟法講義
法律学の教科書はあまたある。法科大学院ができると決まってから、「法科大学院時代のテクスト」と謳ったものも数限りなくある。刑事訴訟法の分野でも事情は同じである。では、その中身はどうかと言えば、論点について、判例を整理して、学説を整理して、キーワードをすこし示しておくというものが人気筋のようである。
本書もそのような一冊である。これまでの学説と判例がうまく並べられている。比較的引用が長く、原典に当たる手間がすこし省けるかもしれない。もっとも、判例の読み方も、どのような立場から読み取るかにより異なるであろうし、「通説」といっても学説の進展により変化する。そのような意味で、本書だけでは物足りない。出版直前の新しい判例にも触れているのだから、もう少し突っ込んだ記述があってもよかったように思う。
ただ、本書は法科大学院のテクストと位置づけられているのであるから、その真価は、どのように授業で用いられるかによって決まるのかも知れない。
入門刑事訴訟法
ですます調で書かれています。
学説も結構書いてありますが、深入りはせず、制度の趣旨が
理解できればいいかという感じの浅めです。
同じ出版社から、本書を厚くした本が出ているようですが、
あれはキツイという方は、こちらでどうでしょうか。