慟哭 (創元推理文庫)
裏と思っていた話が最後に表になって,そこに主題があった。これには感心したけれど,裏になった話が未解決に終るため,消化不良におちいった。しかも,この犯人はかなりやりすぎているのに,解決できないのはおかしいと思った。
主人公はこんな人だろうか。ここまで落ちぶれるだろうか。彼の今までの生き方から考えて,こうはならないと思う。作者が無理やりタイトルの慟哭に合わせる悲劇を作ったような感じがして,私は納得できなかった。
灰色の虹
この作品は、身に覚えのない殺人罪で有罪判決を受けた一人の青年の人生がどのように激変していくか?を描いています。
私は今まで、テレビなどで冤罪のニュースを見るたびに「やってもいない罪を何故自白してしまうのか?」ということが不思議でなりませんでしたが、この小説を読むとこういうことが実際にも何件もあったのかもしれないな〜と少々恐くなりました。最高裁で有罪判決がおりるまでの展開は、自分も主人公と一体となって追い詰められているかのようで息苦しくなり、時々、「小説だから!フィクションだから!」と自分に言い聞かせながら読みました。
この小説で私が一番良いと思ったのは、主人公の青年だけでなく、警察官、検察官、弁護士、裁判官、目撃者・・・など登場人物の一人一人を丁寧に描写しており、各人物の人となりが細かくありありと浮き上がってくる部分です。誰か一人が物凄い悪者だったわけでなく、それぞれの少しの強引さ、怠慢さ、小心さ、などが積み重なっていった結果、一人の人間をメチャクチャにしてしまうほどの悲劇が生まれてしまった過程がよく分かり作品に厚みが出ていたように思います。
ラストはどのようになるのか?気になってページを捲る手が止まらず、ドンドン読み進めましたが、事件の真相は普通に読めば分かるものであり、アッと驚くようなところは特になかったです。またやはり作品の性質上、めでたしめでたし!と全てが解決してスッキリと終わるというわけではないので、読後もいろいろ考えてしまうかもしれません。しかし、久しぶりに中身の詰まった犯罪小説を読んだな〜!という充実感が確かにありました。
私は貫井徳郎さんの作品はこれが初めてだったので、「あぁ!出会えてよかった!」と素直に思いました。他の方のご意見を見ると良作が他にもたくさんあるようなので、これからしばらくの間は、貫井さんの他作品を片っ端から読んでみよう!と楽しみです。
乱反射 (朝日文庫)
この作品はトリックを楽しむものではなく、人間ドラマを楽しむものだ。そこから人間の怖さ、脆さが滲みでていく。“一度だけなら……”と言いながらモラルの違反を犯す。誰もが、“一度だけなら”やったことがあるだろう。そして、そんなモラルの低下が積み重なった時、悲惨な事件が巻き起こる……。
久々、良作に出会えた! 面白かった! 若い人に読んでもらいたい作品だが、若い人に分かるだろうか?(私も青二才だから大丈夫だろう)
崩れる 結婚にまつわる八つの風景 (角川文庫)
何気なく毎日生活している中で、何処かの誰かが、・・・もしかしたら自分が抱いているような「感情」。決して特別なんかじゃないけれども、「○○だったらいいのになぁ」といったマイナス感情が実際に起こってしまったら、本当に怖いですよね。
本書は結婚にまつわる話だけあって、既婚者には(?)背筋がゾッとするようなスリルが味わえると思いますよ。(そばにいる主人には見られないように書いています・・・)
新月譚
読み始めたら止まらずにほぼ一気読みしました。
ぜひ多くの方に読んでもらいたいので内容については書きませんが、
貫井徳郎氏の最高傑作といってもよいかと思います。もう只々圧倒されました。
読み進めていっても読めない結末、ドキドキしながら夢中で読みました。
終わり方も切なく美しく非常に心に響きました。本当によく考えられた作品だと思います。
陳腐ですが、こういう作品を読めたことに心から感謝します。
ほんと素晴らしい!