花物語 上 (河出文庫 よ 9-1)
花物語は、大正5年(1916年)〜大正13年(1924年)に少女畫報に掲載された連作短編集で、
52編を上下巻にまとめたものです。この上巻は33編を収録します。
最初の「鈴蘭」から「月見草」「白萩」「野菊」「山茶花」「水仙」「名もなき花」までは、
7人の少女が集まって花にまつわる話を披露するという趣向から始まりました。「鈴蘭」が
掲載された時、吉屋信子は若干二十歳そこそこでした。そして、これが職業作家としての出発点になった作品となりました。
花物語は、少女たちの出会い、友情、別れにまつわるエピソードが15〜30ページ程度の短編で
構成されます。ここには少女たちの年齢に釣り合う少年など男性は登場しません。友情も
友情以上の感情も少女同士もしくは女性教師といった女性だけの世界で成り立っています。
その繊細な心情が独特の美文調の文章で綴られます。
少女を読者にしている少女小説なので、文章は平易ながら美しく、しかも意外とモダンです。
大正デモクラシーといわれても、まだまだ庶民は旧時代の風習にとらわれていることが多かったはず。花物語の世界では、西洋の文化(文学や音楽)がふんだんに取り込まれています。
上巻で印象的なエピソードは、「雛芥子」「白百合」「燃ゆる花」「釣鐘草」でしょうか。
特に「燃ゆる花」は力作。花物語もこのあたりから女性同士の愛情について踏み込んでいく
作品が増えていきます。
大正時代に書かれた作品ですが、今読んでも瑞々しさを全く失っていないことに驚かされます。もっとも、現代の女学生の皆さんにとっては、「セルの袴」「銘仙」といった服装や髪型の描写はピンとこないと思います。このあたりは巻末注でもあった方が親切かも知れません。
わすれなぐさ (河出文庫)
昔の作家さんとは思えぬほどに読みやすく、一気に読んでしまいました。
所々、分からない当時のことばが出てきましたが、そこは嶽本野ばら氏の註訳があるので問題ありませんでした!
少女と書いて、おとめと読んだ素敵な時代。嶽本野ばら好きはもちろん、乙女であれば嫌いな人はいないのでは?というほど、乙女心を貫かれました。
あの道この道 (文春文庫)
その昔、小学校の図書館で、当時ですら古びた活字の本だったのですが、クラスの女の子が夢中で回し読みしたものです。30年後に読んでみると、言い回しも狂言ぽくって、笑える部分も多いのですが、子供時代は、しのぶに自分を重ね合わせて、逆境にめげず清く美しく生きる彼女を応援しながら読んでいたのでしょうね。赤ちゃんの取り替えがテーマの本って多いですが、これほどメデタシメデタシというのも、いいんじゃない!と思ってしまう作品です。
続 徳川の夫人たち 上 朝日文庫 よ 11-11
「徳川の夫人たち」が面白かったので「続‐」も購入しました。お万の方の人生を描いた「徳川の夫人たち」に比べ、こちらは歴代将軍の大奥に働く女性たちを中心に様々な主人公を描いて短編集のように進行します。ただ切れ切れに主人公が変わるのでなく、歴史の流れにそって話が途切れることなくすんなりと次の主人公に移行しますので、短編嫌いの私にも抵抗なく楽しめました。一人の人生をじっくりと読み込むのではありませんが、豊富な資料と周到な調査の上に、今までスポットの当たらなかった女性たちについて個性豊かに描かれている点は、面白かったです。ただやはり前作のような濃厚な物語を期待した方にはちょっぴり物足りなさを感じるかな、という点で星4つです。
『少女の友』創刊100周年記念号 明治・大正・昭和ベストセレクション
今年85歳になる母にプレゼントしたのですが、とっても懐かしいと言って喜んでくれました。本を読んでいる時の母は、昔の気持ちがよみがえりとても若々しく見えました。母にとってこの本はとてもよい刺激になり良かったです。