ヤンヤン 夏の想い出 [DVD]
『ヤンヤン 夏の想い出』が特別に身近な印象を観客にもたらすのは、この映画には親しい友人を見つけることのできるような空間が開かれているからだ。観客は、それぞれの年齢や性別による立場に応じて、自分と身近に感じられるような人物たちの姿を映画の中に見出すだろう。
映画の登場人物たちからは、ある種の単純さがこの映画を支えていることが分かる。このように生きている人物がいる、その人物には美質がある、というのがその単純さだ。一家の父には正直さや誠実さがあり、母には人生に対する困惑を生きる素直さや子に対する愛情があり、引っ込み思案な性格をもつ女学生の長女にはひたむきさがあり、幼い長男にはこれから長く続いてゆく人生に対する好奇心がある。余計なトラブルを巻き起こす一家の母の弟に当たる男にしても、外からの空気を導き入れることで彼の陽気さや屈託のなさが一家に対して活気をもたらすような軽視しがたい影響を及ぼしている。とはいえ、度外れた不運にも幸運にも見舞われかねない危うさの上に彼が生きているという点で、彼は一家の人物たちとは少し異なる世界に属している。登場人物たちがそれぞれに美質をもった人物として捉えられている点で、エドワード・ヤンは『ヤンヤン』において前作『カップルズ』においてあったようなシニシズムからは遠く離れている。
この映画は、同じく群像劇であった他の映画を想起させるが、それらとは異なった印象をもたらす。アルノー・デプレシャンの『そして僕は恋をする』では、出来事を経験することによる登場人物の変化が描かれる。また、オリヴィエ・アサイヤスの『8月の終わり、9月の始め』では、登場人部たちが出来事を経験する時間の大きな流れが描かれる。『ヤンヤン』において登場人物たちは、重大な出来事が起こる一つの夏という短い時間を経験するのみだ。出来事の事前と事後で彼らが大きく変化することはない。
さらに、この映画は、未来に対する楽観主義に支えられている。それぞれの人物は、一つの夏を通して各人の年齢における人生の重大な出来事を経験するが、結局は大きな変化もなしに人生を生きていく。彼らが生きる世界においては、人生を望み通りに変えることができるようなマジックは存在しない。マジックなど存在しない世界で、登場人物たちはそれぞれの人生を慎ましく生きている。未来が現在とは異なっているものだという希望や楽観的な態度なしに、このような人生を生きることは可能ではないだろう。
おそらくは監督自身の投影でもあるだろう少年のヤンヤンは、見えないものを見せてあげると言って人々の後頭部を写真に撮り、これから生まれてくる甥に対して見たことがないものを見せてあげ知らないことを教えてあげたいと記した手紙を祖母の葬式の際には読み上げる。『ヤンヤン』は、未来に対する漠然とした楽観的な態度なしに人生を生きることは出来ないということを見る者に教えてくれる。
宮崎駿の雑想ノート3 「最貧前線」
最初は、現代から始まりそして、いきなり昭和20年の3月の太平洋上へとタイムスリップする。メインのイッセー尾形さんのゆっくりとした幹事の声は、戦争と漁船の乗組員という不釣合いな関係にマッチしている。その一方で、過酷な現実が同時に進行する、かつて、日本が戦争をし、それに漁船も犠牲になったという事実を、恥ずかしながら此れで初めて知った。これは、素晴らしい作品です!また、BGMが美しく、目をつぶっていると情景が浮んできます。
イッセー尾形と永作博美のくらげが眠るまで -犬- [DVD]
イッセー尾形といえばひとり芝居! というイメージが強いですが、この作品は2人芝居。特に舞台とは一味違ったものになっています。永作さんとのかけあいも、長年コンビを組んでるかのように息のあった楽しい作品に仕上がっています。まだ、見ていない人は一度お試しを