目撃!文化大革命 映画「夜明けの国」を読み解く DVD付 (DVDブック)
1967年に公開された、ドキュメンタリー映画。
岩波映画の撮影隊は一九六六年八月から翌年二月まで、北京、瀋陽、撫順、鞍山、長春、ハルピンなど中国の東北地方に滞在し、約八万フィートに及ぶフィルムを使用して中国の現状を長編記録映画に収めた。
当時の中国はコミュニズムの実験大国であり、日本にとってはベールに包まれた(といっても現在もその感はあるが…)未知なる国であった。
そのせいか全共闘の学生やコミュニストの中にはこの国を、「今は貧しくとも、いつか理想の国家が実現されるに違いない」という目で見るものも少なくなかった。
私も当時の若者だったら、その熱に浮かれてしまったかもしれない。そう思わせるくらい、このフィルムに収められた中国は魅力的だった。
工場では「どうしたらより良い生産ができるか」の議論に対して、エンジニアも下働きも工場長も皆、平等な立場で、自由に、そして真摯に発言を繰り広げ、見聞を広めるべく全国を渡り歩く紅衛兵は、「明日のわが国を担うのは私たちだ」と顔を輝かせインタビューに応じる。
反面、この国は貧しい。
農村にはテレビも映画館もない。情報は都市からやってくる官製のフィルムでしか知ることができない。衛生の行き届いた病院も近くにはなく、医療隊が来るのを待つばかり。受けられる医療は限られたものに違いないし、それによって救えなかった命も多くあることは推測できる。
しかしそれをさし引いても、GDPでは計れない幸福がこの国には満ちあふれていた。
'ケ小平の政策以来、中国は豊かになった。しかし今の中国と当時の中国は、どちらが幸福だろう?そして日本はどうだろう?考えさせられる事の多い映画だった。