タイ (ブルーガイド わがまま歩き)
ツアー旅行者やお金のある旅行者向けの内容だと思う。この本を持って1人で町歩きに出かけても、おそらく迷うことになりそうだ。各観光スポットについては詳しく書かれているのだが、そこに行くまでの解説が「わかっていること」を前提に書いたとしか思えないような表現になっている。
たとえばバンコク市内の記事だと、目的地へ行くまで「どのあたりのバス停・駅・船着き場から、どの経路で行けばいいか」という情報が抜け落ちていて、その情報を探すために、いちいち地図と路線図のページを何度も往復して確認しなければならない。しかもスカイトレインとエアポートリンクは全く違うページに掲載されており、路線図が掲載されているのはスカイトレインのみ、それ以外のエアポートリンク、国鉄、チャオプラヤーエキスプレスなどは地図を見ながら自分で判断するしかない。
お金があってタクシーをチャーターできる人や、ツアーで行く人なら、このガイドブックでも十分だろう。しかし地元の交通機関を使ったり歩いたりする人にとって、本書はけっこう厳しいものになるのではないかと思う。
タイ語の本音 (双葉文庫)
「タイ語の本音」といっても、タイ語についてのマニアックなうんちくをひたすら語るわけではありません(実はそれをちょっと期待していたのですが……)。
基本的にはタイおよびタイの文化論。
いや、文化論というとちょっと重いかもしれません。
タイ語の単語をベースにしながら自由に語るエッセイ集、エピソード集という趣です。
「海外についてのエッセイ」というと、その国のことをベタ褒めし、日本が何を学ぶべきかを説く、というものが多い気がします(特にヨーロッパについての本は)。
本書は逆に、タイ人のいいところはもちろん語りつつ、それと同程度にけなします。
いわく、「サボってばかりいる」「言い訳ばかりする」「そもそも規律を守ろうという意識がない」など……。
ひょっとしたら、けなしているほうが多いかも(笑)。
にもかかわらず、著者のタイとタイ人への愛の深さはびんびんと伝わってきます。
好きだからこその悪口、そしてタイ人の複雑な性格を知り尽くしているからこその悪口なのでしょう。
表面だけを見て、「○○人に学べ!」などと書く本とは、深みが違います。
タイ人がとても身近な存在に感じられる、お勧めの一冊です。