007大百科
ボンドガールや悪役をはじめ登場する俳優、ボンドカーや武器など、懐かしいシーンと共に見ることができる。残念なことは、ジェームス・ボンドの活躍シーンの記載が少ない。特にショーンコネリーについてのページや、シーンの写真が極端に少ない。とういうか、ポスター以外にほとんどない。版権の関係でしょうか?
007/カジノ・ロワイヤル (創元推理文庫)
西村京太郎作品における十津川警部シリーズのドラマ放送版のあるシーンで、彼の妻が自分たちには子供がいないことをどう思っているかを尋ねたところ、彼は「それはたしかに寂しいが、君と出会えたことでひとまず人生良しとしたい」と語った。ボンドと共に資金係としてカジノに参加した美しき女性ヴェスパー・リンドとの出会いとその結末は、私には、上述された十津川警部のセリフとなぜか響き合った。全27章の個性的なタイトルも読者の注目を惹くことであろう。
ボンドに与えられた007(ダブル・オー・セブン)の「00」とは、たとえば裏切り者を二人殺害することで得られる称号だ。彼の任務は冷酷さを要求されるものが多く、着実に職務を遂行するボンドの姿勢にはある種の無機的な印象が付きまとう。とはいえ、「解説」にもあるように、本書は「ジェームズ・ボンドという秘密情報部員が、外部からの刺激を受けてひとりのスパイとして完成するまでの物語」であり、人間的で情感溢れる男の魅力がよく描かれている。少なくともボンドを「無敵の英雄」視する固定観念は、本書によって修正されるに違いない(007の原点である作品であるゆえに、私自身、できるだけ丹念に読むよう心掛けた。あいにく「古さ」はあまり感じなかった)。
映画を通じてお馴染みのアクション場面がほとんどないのは残念であり、2006年に公開されたD・クレイグ主演の迫力(アクション)・緊張感(カジノ)・哀愁感(エンディング)に富んだ映像のインパクトが大きかっただけに、物足りなさはつきまとった。1953年という原書刊行時から半世紀を経ているからのだからむろん仕方ない面はある。原著から映像という順序であれば逆の効果が得られただろう。他のレビューにあるように、映画とセットで楽しめるし、それによって作品をより深く理解できよう。邦訳の出来栄えもよい。新版前にすでに60刷を重ねていることもやはり驚異だ。
「007/カジノ・ロワイヤル」オリジナル・サウンドトラック
David Arnoldによる音楽で今回が4作目となるボンド映画ですが、過去3作とやや作風が様変わりしています。これまでのデジタルサウンドを多用したノリのいいBGMから、弦楽器、打楽器中心のソリッドな作りに変わっています。これは劇中でのボンドのイメージチェンジと無関係ではなくダニエルクレイグのキャラクターにはこの方がマッチしていると映画を観てから感じました。映画を観た人にとってはサントラで映画のイメージを再現できるという意味ではお勧めです。1. African Run Down、8. Miami..、21. Switchの3曲は、スリリングな展開を再現する良いスコアだと思います。
一方で、作曲にあまり時間がなかったのかなと感じる部分もいくつか。過去2作品で使われたフレーズ、または類似のフレーズが随所に出てきて、ここはマイナス評価。25曲もあるようで、実際にしっかり聴けるのは数曲で、あとは単調なBGMであるところも残念。主題歌がないのはさらに残念。評価は、Arnold作品で最もできのよかったと思うWorld Is Not Enoughが星五つであれば、星三つから四つになりますが映画のできのよさに助けられて星四つにしました。
007 / 慰めの報酬 (2枚組特別編) 〔初回生産限定〕 [DVD]
カジノロワイヤルの続きという設定で、前作で亡くなった女性の所属していた組織はどんなものだったのか、その組織の表の顔の一部である慈善事業団体のトップであるグリーンに迫っていきます。
今回のダニエル・クレイグ演じるボンドも甘さを極力排除し、ハードアクションに徹する、力強く、肉体派、鋼鉄の男ボンドを演じるという感じです。ただ、女性との関係はところどころでてきますがあくまでも副次的。
ただ、もう少し頭のいいボンド、情報分析するボンドをみたいもの。
なかなか映像コンテンツでは難しいのかも知れませんが、現実のスパイならそういうシーンもあっていいはず。
この映画、ストーリーはもちろんおもしろいし、迫力もあるのですが、ボンドを含めた登場人物のファッションもしっかり見るべき点です。
とりあえず、ボンドのブリティッシュスーツやタイがかっこいい。
そして、 ところどころでチラリチラリと見え隠れする腕時計のシーマスタープラネットオーシャンも。
こういう映画、かなり好きです。
007 カジノ・ロワイヤル デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組) [DVD]
007シリーズが開始されたのと同じ年に生まれて、今まで全作品を観てきたが、面白さはともかく、映画の質として初めて傑作といえる作品に仕上がった。それがとても嬉しい。原作の映画化権について、長い係争の末、ようやくイオンプロに帰属することになり、久々にイアン・フレミングの小説をベースにしてるのも、オールドファンとしては喜ばしい。
今回からボンド役にダニエル・クレイグの起用となったが、確かに普通考えればこのキャスティングはありえず、反対意見が多いのもわかる。しかしオープニングタイトルは全作ともボンド役の俳優の次に必ず、"as Ian Fleming's James Bond 007"と出るわけで、ダニエル・クレイグも、フレミングの創作したボンドを彼なりに十分披露してくれたと思う。
ひとつのプロダクションで、シリーズを半世紀にわたって製作するのは並大抵ではない。このシリーズも何度も存続が危ぶまれた。「ゴールデンアイ」以降、イオンプロとは付き合いのない外部スタッフ起用がなされ、ある程度持ち直したものの、「ダイ・アナザー・デイ」でまた壁にぶちあたり、今回また雰囲気を一新しての新作となったわけだが、吉と出て本当によかった。
これほど人間味にあふれたボンドはなかったし、何よりアクションのキレは抜群。ジュディ・ディンチのMもすっかりなじんだどころか、もはやシリーズでも欠かせない存在となった。脚本にクリント・イーストウッド映画の常連のポール・ハギスが加わったおかげで、しっかりと登場人物に厚みがついているのが、最大の成功要因だろう。
シリーズものの「お約束」もうまく逆手に取っている。オープニングでボンドがカメラに向かって拳銃を撃つ必須シーンも、初めてストーリーの中での場面として扱われている。
しかし、もうひとつのお約束、シリーズで常にボンドが言う、最初のセリフがない。仕方ないかと思っていたら、なんとそれが最後のセリフになっているイキさには脱帽。
なるほど、主題歌のタイトルは"You know my name"だもんね。
イオン・プロのブロッコリ父娘の情熱には敬服する。今後も傑作を観せてほしい。とにかく本作は、007を知らぬ人にもぜひ観ていただきたい傑作だ。