黄色い髪 (朝日文庫)
いつの時代でも不登校や非行をこの本から感じさせます。
主人公は中学二年生の女の子とその母親。
その女の子はイジメがきっかけで学校に行かなくなり、『都会の夜』に出るようになる。
母親は、どうして娘がそうなったのか、その答えを知るために、『都会の夜』へ向かい、そこにいる少年少女たちとふれあう。
やがて、娘を理解していく。
今も「不登校なんて、不良なんて」と非難の声をあげている人が多い。
学校が悪いとか先生が悪いとか。
でも、母親から娘へあてた手紙を見たらその考えは間違いだと気づくはずです。
気づかされた、大切な一冊。
芥川賞を取らなかった名作たち (朝日新書)
私は小説読みではないが、そんな私でも本書に取りあげられた中でなぜ芥川賞をとらなかったのか
不思議に思う作家がふたりいる。太宰治と吉村昭である。
当初、芥川賞は賞の性格がはっきりしていなかったそうだが、
基本的には将来有望な新人純文学作家に与えられるものである。
だから選考委員は見抜く目が必要になる。見抜き損なったのは、太宰治と吉村昭である。
吉村さんはこうおっしゃっている。
「芥川賞をとっていたら、歴史小説には手を染めなかっただろう」
なるほどそういう僥倖もあるわけで、吉村さんは素晴らしい歴史小説を書き続けたのである。
よかった。
太宰治は芥川賞が欲しくて欲しくてたまらなかった。でもとれなかった。
それが太宰のお道化の根性に火をつけた。戦後太宰は賞から離れて、
名作『トカトントン』や『ヴィヨンの妻』を生んだ。