この世で一番おもしろいミクロ経済学――誰もが「合理的な人間」になれるかもしれない16講
これまでまともに経済の専門書を完読したことのなかった私にとって、本書が最初の最後まで読み切ったミクロ経済学の本となりました。親しみやすいイラストと分かりやすい構成でスイスイ読み進められました。
本書の構成は
1.個人の最適化戦略(合理的個人)
2.相互関係における最適化戦略(ゲーム理論)
3.市場のおける最適化戦略(需要と供給、競争市場)
と3部構成になっていてこの順に読み進めてスムーズに理解が進みます。他のミクロ経済本ではここでの3部から始めるものが多い気がします。ゲーム理論に大きなスペースを割いており、ゲーム理論の経済学における役割と位置づけがよく分かりました。
また、各所でこの理論はノーベル賞を取った成果といった紹介もあり、経済への興味をより深めてくれました。
本書はあくまで入門書なので、本書の理解をきっかけに他のミクロ経済学の本でより理解を深める必要はもちろんあります。原書では既に続本となるマクロ経済本が出ているそうです。続いて日本語の訳本が出るのを楽しみに待ちたいと思います。
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
リチャード・ファインマンのこの本は、物理学はもちろんの事、物理を離れた周辺雑記風なことやらを思うままに書き綴った自伝風味のエッセイ集である。
タイトルにもなっている「ご冗談でしょう? "Surely,you're joking,Mr.Feynman!"」というのは、ある茶会でのとあるセレブ婦人の「ホホホホホ!」という冷笑とともに発せられたお言葉だった。
彼はこの前の戦時中ロスアラモスでのマンハッタン計画に参画していた。本人いわく、ファインマン氏は原爆実験の爆発を「肉眼で見た、唯一の人間!」。彼はこのロスアラモス時代に最初の妻を結核で亡くしている。
しかし、原爆に関する記述は(上)(下)を通じてこの部分だけ。自らがその開発に携わったにもかかわらず、むしろ、その成果に満足しているような風なのが気になる。
「サングラスを掛けず、肉眼で原爆を見た唯一の人間」かどうかしらないが、少しは良心の呵責に耐えるということはなかったのか。
同じ日本の風呂を使った湯川博士は、その生涯を通じて原発反対の最先端に立ってきたというのになあ、もう! 「ホホホホホ」と笑われた事を忘れずに・・・・・。
彼の言動はまさに「ご冗談でしょう」と言いたくなるほどだが、読みやすい日本語訳とともに(下)でも我々を飽きさせない。
ビューティフル・マインド [DVD]
アメリカのアカデミー賞は、あてになる。毎年、受賞する作品は性質は違えど、強烈な表現力を保持しているし、心に残る感動を刻んでくれる。 もちろん、この作品も例外ではない。
ノーベル賞を受賞した実在する数学者の話。数学者として才能を持っていながら、周囲に認められず、不遇な時代。画期的な説を打ちたて、一躍抜擢された名誉ある地位。そして、研究に没頭するが故に精神が冒されてしまう。
精神病を扱った映画をいくつかみてきたけど、この映画はその怖さの「果てしなさ」とか「悲しさ」を見事に伝えている。自分の存在を根こそぎ否定する病気。苦しみが見てて辛かった。
内助の功、そのままだ。「愛で支えていく」、言葉にすると簡単だがそれが想像もつかないほど過酷な試練だということをこの映画は伝える。この女優の名演は、アカデミー賞への大きな一歩になっているだろう。
ラッセル・クロウは今旬の俳優。素晴らしい。役が乗移っている。「L.A.コンフィデンシャル」、「インサイダー」、「グラディエーター」、そしてこの作品。一見、無骨だけど全身で表現している俳優だと思う。
タイトルそのまま「ビューティフル・マインド」。感動が深いです。
世界で一番美しい元素図鑑
3Dの元素周期表は既に持っており、その解説書という意味合いで本書を購入ました。
まず高い本であること。
それがものすごく抵抗を感じさせますが、写真オンパレード、一般書とは言い難いなどを考えると仕方がないレベルでしょうね。
で、各元素に関連する著者の所有する様々な所蔵品等の写真は目玉。
各ページにつけられているコメントはウィットに富んでいて面白い。
まあもっといくらでも語れると思うのですけど、そういう意味ではちょっとした読み物程度しか書かれていない記事は寂しい感じもします。
個人的に面白いのはまあ理化学事典・理科年表その他でも十分なものもありますが、
各原子について、
原子半径の大小のグラフィック的な表示、結晶構造、電子配置表と、各相の温度帯、そして何よりスペクトルをカラーで表示していることでしょう。
スペクトルの表示は一般に有名な水素とかナトリウムぐらいしか見たことがないのですが、ほぼすべての元素に対してこういうカラーのものを見たのは初めてです。
また、各相の温度帯もページの一番端を利用することで他の物質と比較できるようにしてあって、我々のような素人向けにいろいろと比較できるように工夫もあります。
まあ実際には詳細な数値がなければ実験には役に立たないこれらの内容ではありますが、視覚的にあらわされているのは面白いです。
イグノーベル賞をとった元素収集マニアの本だ、という意味でこれは結構よくできた本だと思います。
チボー家の人々 DVD4枚組(1WeekDVD)
ノーベル賞を受賞した名作大河ロマン小説を映画化したもの。
原作を読んだことがある人にとっては、
あの本の世界が映像化されることに感嘆することでしょう。
もちろん、本でしか表せないものもありますが、
映像でこそ伝えられるというものの力を感じることができた。