鈴木清順 ランキング!
鈴木清順大好きな出版社の担当者と著者が情熱を傾けたという本 (あとがきより)…熱意を感じます。価値ある大変な労作です。まず、美しい装丁が素晴らしい(カバーを外した内側…黒地に金の桜が散るデザインもいい)。カラーページも愉しい。宣伝用スチルも一部仕様しているものの、中心は日活でフィルムと部屋を借りてコツコツ欲しいシーンを探して構成した部分です。さて、本書のメインは座談会です。出席者は蓮實重彦氏、山田宏一氏、山根貞男氏、上野 昂志氏、。映画論集とは違う読みやすさと面白さ・律動感があります。座談会のタイトルは「映画はひとを成熟させない」。もちろん清順インタヴューも入っていて、本書出版時の最新作『カポネ大いに泣く』を中心に、タイトルは「あと三十本は撮れる」。(後述するフィルモグラフィにも清順自身の発言が作品ごとにかなり収められています)凄いのはフィルモグラフィで通常のものとは別物です。扱う範囲は第一作『港の乾杯・勝利をわが手に(1956)』から第四十四作『カポネ大いに泣く(1985)』まで。細かい字で100ページを越える量。各作品に詳細な(本当に詳細な)粗筋と主要スタッフリストが付き、さらに「封切時環境(興行成績や同時期公開作品・封切期間等)」「当時の批評」「関連文献」「清順監督の発言」「日活プレスシートの抜粋」などまで入っているのだから…圧倒的です。とくに後期(『野獣の青春』以後)の資料の分量が半端ではない…!。各作品のポスター(縮小白黒だけど)まで入っている。他にも、避けては通れない「日活解雇事件」の経緯や顛末についてや、コマーシャル時代(『殺しの烙印』以後の映画を作れない時期)についても、それぞれ章を設けてあります。私自身は、80年代末に本書を探し回り見つからず困ったものです。1991年『夢二』公開時に第二版が出てくれたので買いました(第二版には『夢二』の資料付属します。見開き2ページです。)が、以後の作品や役者としての活動、(アニメ)ルパン三世などへの参加(←本書ではスルーしている)、VHD作品(『春桜・ジャパネスク』)などについてもフォローした内容での再販を希望します。繰り返しますが、価値ある大変な労作です。清順ファンの方、留保なくおすすめします。 鈴木清順全映画 関連情報
むかし上映会の企画で、清順さんの対談を聞いたことがある。映画に出演していた藤田敏八や大楠道代といった面々が登壇し、場を盛り上げようと懸命に話すさなか、イヤに監督の口数が少ないと思っていたら、壇上でひとり清順さんは居眠りをしていた。話を振られ居眠りが発覚した監督に、会場の一同は唖然。「食えないジイさんだなぁ」 とコチラは思ったが、 「鈴木清順らしいなぁ」 と感じた古いファンも相当数いたことだろう。そんなトボけた鈴木清順を見ていたこともあり、その後、彼の文章を読んだときには、その饒舌さと熱気に驚かされた。清順という人は、あまり自分を語らない人だと思い込んでいたからだ。米兵相手に商売する女たち (洋パン) との共同生活を描いた、 『洋パンと 『野良犬』 と自動小銃』 では、終戦直後の猥雑さとともに、女たちのたくましさと著者の鬱屈した怒りが、むせかえるような文章でつづられている。うだつの上がらぬ革命家をとおし、人間の生と死を冷たく鮮やかに切り取った 『あだ花』 。ヒットラー総統にあこがれた少年時の体験をつづった 『わがナチ体験』。ファシズムを礼賛するわが国の軍国少年たちというのは、こんなふうに無邪気だったのだろうか。『アナキストは誰だ!』 は、大杉栄50回忌追悼講演の原稿。自分が大杉栄を映画にしたらどうなるのか? 自身の映画作法を解説している点が興味深い。意味不明なシーンや唐突な場面展開などで、一般観客にはワケのわからない映画にも見える清順作品も、どうやら監督の頭の中では、見せ場たっぷりの物語が大スペクタクルとともに展開しているらしい。『ゆき あめ かぜ』 という文章では、映画 『けんかえれじい』 終盤、ヒロインが主人公と決別する二・二六の雪のシーンが語られている。清順監督によれば、あの雪は、どろどろした日本人のどす黝い血のかたまりであり怨霊なのだそうだ。その意図が、成功したか失敗したかはともかくとして。 鈴木清順エッセイ・コレクション (ちくま文庫) 関連情報
鈴木清順監督自選DVD-BOX 壱 <日活から大目玉をくらった作品>
鈴木清順の初期の作品です。特に『港の乾杯』には、当時の横浜の貴重な映像が出てきます。麦田の市電などは、他の作品にはないものです。 鈴木清順監督自選DVD-BOX 壱 <日活から大目玉をくらった作品> 関連情報
鈴木清順監督作品は他に「カポネ大いに泣く」「結婚」「ピストルオペラ」などを観たが、この『夢二』は別格だ。まず、ビジュアルが言葉で言い尽くせない程美しい。メイキングVTRを観た人なら知っているだろうが、その美しさのほとんどがスタッフの手作りで、幻想的な色合いも古典的な顔料や絵の具で彩られている。Blu-ray化を望む声を多く聞くが、この映画だけは、まるで夢の中に居るような淡さを残した方が良いのかもしれない。鮮明すぎる映像でチープになった清順絵巻は見たくない。観た後に『夢二=JULIE』と錯覚するほど、主演の沢田研二は当たり役。見事なまでにふらふらと足元おぼつかない「エエ加減な」夢二を演じ切っている。当時43歳の沢田研二の適度な円熟味があまりにも良い味を出していて切ない。夢二本人のモデル経験もあるという淡谷のり子さんのエンディングテーマもピッタリとはまっている。鑑賞後の感じはイタリア映画に似ている(フェリーニ映画など)が、間違いなく一度観ておいて損はない名作。 鈴木清順監督 浪漫三部作 DVD-BOX 関連情報
『映画は一本こっきりのものですよ。打ち上げ花火のようなもんだ。パッと開いて消えて失くなる。誰がこの時期、映画が残ると思いましたかね。(清順)』この本の凄いところは監督作49本を ‘一本づつ’ 取り上げてインタビューしているところ。本名・鈴木 ‘清太郎’ 名義の初監督作『勝利をわが手に~港の乾杯~(1956)』から『オペレッタ狸御殿(2005)』まで(‘清順’になるのは第七作目から)・・・それこそアニメからオムニバス参加作品を含む全ての監督作を網羅している。しかも、ビデオ作品や『映画監督って何だ!(2006)』演出部分、さらにCM監督時代やテレビ演出作品(←結構あるんだなぁ)、または役者とのしての活動についても個別に項を設けてインタビューしているのだ。かなりの労作だと思う(編集も監督もお疲れ様でした)。そのインタビューだが、実施時期については記載がない。本書出版当時(2006刊)最新のものもあるが、‘日活時代’ のインタビューの一部は同じ出版社・編者による『清順スタイル(2001刊)』に引用されているので2001年以前なのだろう。編者自身による‘解説’とか‘あとがき’みたいなものが本書にはないのでハッキリしない (そこが残念) が、複数回のインタビューをまとめた本、ということは間違いない。語られる内容(情報)としては以前発刊された『鈴木清順全映画(1986刊)』上野昂志・編に被るところも多い。といいつつ、本書で初めて知ったことも非常に沢山あった。私は『探偵事務所23くたばれ悪党ども(1963)』以前の作品は観ていないのだが、それでも楽しく読むことが出来たことも書いておきたい(編者のマニアックな努力も○)。定価での購入は少々高い・・・かもしれないがファンとしては見逃せない一冊なのは確かだと思う。個人的には『ルパン三世・バビロンの黄金伝説(1985・吉田しげつぐ共同監督)』をスルーせず第二期テレビシリーズ参加も含めて(簡単ではあるが)語った部分や、ゴダールやフェリーニあるいは黒澤・小津などに触れた部分が印象的だった。『だいたい、撮ってて自分でも繋がってるのか繋がってないのか、分らないんだから。(清順)』さて、インタビュー時点からみても ‘日活時代’ は殆どが40年程度前の出来事。なので、監督の記憶もあいまいなところがある様子・・・編者の方が細かくチェックしており監督自身は忘れている・・・ということもしばしばなのだ。自作のインタビュー本なのに監督はアッチコッチで他人事みたいな・・・人を食ったような返答をしている。例えば監督として、‘俳優の演技のつけかた’を問われて・・・→ 『俳優と話なんてしませんよ。決まったものを撮っているんですからね。アクション映画は格好よく銃を撃てばいいんですよ。(清順)』清順美学の代表的な要素といわれる特徴的な‘配色’の意図を問われて・・・→ 『さあ、そこまでは考えちゃいないね。(清順)』アニメの演出を問われて・・・→ 『こっちはよく知らないからね。(清順)』万事がこの調子。言い放題である。読みながら何度も噴出してしまった。そして実は、本書最大の魅力はココである。・・・監督の個性溢れる痛快な‘返し’を存分に楽しめる痛快な一冊・・・ココなのである。いやはや楽しい。質問する方を煙に巻くその返答、そして毒舌。もちろん、全てを真に受けてはいけない。江戸っ子の洒落が効いているのだ(監督は大正12年産まれ、東京日本橋呉服商の長男だったそうだ)。実際に監督作を観て、それが(監督が言うように)思いつきで撮った(あるいは編集した)ように思えるだろうか。『そこまで考えていない』ように見えるだろうか。『オペレッタ狸御殿』DVDの特典ディスクにもあるように実際にはかなり練りこまれ厳しく創られたものなのだ。本書だって、ホンのすこし注意深く読めばそこには戦前派としての信念と確信がハッキリと立ち昇る。しかしながら、それを簡単に口に出すようでは粋ではない。その感覚は江戸前なのだ。なんと痛快なことか。本書とちくま文庫から出ている『鈴木清順 エッセイ・コレクション(2010刊)』はそれを味わうにはうってつけだ。粋な清順を是非。『いや、その場で楽しみ笑って終わりが映画だと思ってるんでね。(清順)』 清/順/映/画 関連情報





![【MMD】Honnō-ji incident【本能寺の変】 変[HEN]](http://img.youtube.com/vi/7jTH7Ln-4VQ/2.jpg)












![HONKOWA(ほん怖) 2016年 01 月号 [雑誌] HONKOWA(ほん怖) 2016年 01 月号 [雑誌]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B017VDP9HC.09.MZZZZZZZ.jpg)

![劇場版「進撃の巨人」後編~自由の翼~初回限定版 [Blu-ray] 劇場版「進撃の巨人」後編~自由の翼~初回限定版 [Blu-ray]](http://images-jp.amazon.com/images/P/B015QWQADC.09.MZZZZZZZ.jpg)







