不慮の死を遂げた見知らぬ人々を<悼む
天童荒太 ランキング!
第9回山本周五郎賞受賞の小説は評価高いけど
過激な暴力描写が賛否を呼び、それをどうやって
ドラマ化するのか、期待半分、不安半分で視聴。
TBSはドラマ化の構想に実に7年も費やし、
2014年の現代に設定を置き換えて再構築した。
感想としては「うまくまとめたのでは」という印象で、
それぞれの崩壊した家族の葛藤、苦悩も手抜かりなく
きちんと描写してたし、ドラマ的な魅力はそれなりにあった。
ただ、当初は松雪泰子が家族惨殺事件の疑惑の人物として
ストーリーが進んでいき、なかなか興味深かったけど、
途中から違う方向に話が向かうので興味が薄れたのも事実。
犯人の財前直見と藤本隆宏が崩壊した家族を来世で再生させる
「粛清」という名のもとで惨殺を繰り返す身勝手な犯行動機には
びた一文共感できるものではなかったが、彼らの凶行が
主要人物の人生観、家族観を変えさせ、向き合わせている
というストーリー展開は、重いけど考えさせられるものがある。
しかし、個人的にはこういう重苦しいドラマを
最後まで見続けるのはしんどい。
視聴者の評価は異常に高いけど(ちょっと褒めすぎな感もするが)、
世間はこんな陰惨で重苦しいドラマは敬遠し、
不倫ドラマとキムタク検事に夢中だったようで視聴率は苦戦。
そのためか、最終回は駆け足でエピソードを回収していった感じが
どうしても否めず、前半のゆったりもっさりした展開に比べ
明らかに妙な違和感を感じた。これはちょっとマイナス。
とはいえ、ぬるま湯なドラマばかりが作られる中で
こういう題材に挑んだTBSのチャレンジ精神、心意気は買いたい。
家族狩り ディレクターズカット完全版 [Blu-ray] 関連情報
文章ではうまく伝えられそうもありませんが、とても感動しました。一気に読んでしまい、次々と天童荒太さんの小説を買って読んでいます。 悼む人〈上〉 (文春文庫) 関連情報
原作を読んだ後ドラマ化されると聴いた時、あの世界をドラマ化できるのか?と思っていましたが、いい意味で裏切られました。
出演者、スタッフの強い思い入れが感じられる作品です。
特に中谷美紀は、それまで綺麗な女優さんというイメージしかなかったのですが、それが誤りだった事を教えてくれました。
出演者それぞれが適役なのですが、中谷美紀⇔石田ゆり子・椎名桔平⇔渡部篤郎と配役を入れ替えても、別の形でドラマとして成立するのでは?と思いながら観ていました。
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話の焦点は過去に移る。現在では優希の自宅が焼失してしまった。焼け跡の死体。疑問がつのる中、失踪した聡志。何も分からないまま、ただ過去に何があっただろうか。
帯には「人は救いを求めて罪を重ねる」とある。笙一郎にしても梁平にしても、そして何より優希にしても救いが。優しさが欲しかった。自由が欲しかった。全てはその過去が現在に繋がる。会ってしまった3人。
優希への想いそのままなのか。二人は嫉妬もし合いながら支えていく。過去と現在で似ているようなのはここだろう。優希はその優しさに、いつも支えられていた。だからこその今の存在があるのかも知れない。それでいて「家族狩り」と似たような問題提起も、伺えないことはないが。ずっしりこたえた重さは感じられず読めるあたりが本作の魅力かも知れない。逆にその重さが「家族狩り」の面白さではあった。
事前に起きた殺人事件は優希家の消失と関係はあるのか。そして過去の罪の動機が明らかになってくる。次は11月10日刊行の四巻に続くが、期待するばかり。エンターティンメントとしてなかなか盛り上がってきた。 永遠の仔〈3〉告白 (幻冬舎文庫) 関連情報
「永遠の仔」から7年。7歳年をとったので、「悼む人」をすんなりと受け止めることができたのだと感じています。「永遠の仔」や「包帯クラブ」の時に感じた違和感や懐疑心が消え、初めて天童荒太のファンになれた気がしています。できれば「母」となる前にこの本を読みたかったとも思う一方、死からほど遠い若さでこの本を読んでも、今ほどの読後感を得られなかったろうとも感じます。本と読者との相性は、出会うタイミングに大きく作用されるものでしょう。そういう意味で、この本と幸せなタイミングで出会えた人が多いことを祈ります。
歪んだ人間性を自虐的に現出させて周囲から疎まれる者。高い知能で自己の歪みを隠しながらも破綻していく者。悲惨な最期をとげながらも自業自得と言われ悼まれない者……etc こうした様々な歪み、不幸の根元に、作者は「母」を登場させます。出産という行為、子供という存在のみでは、必ずしも女性から母性に進化できないと考えさせられました。そして日ごろ常無意識でいた、コーヒーを飲みながらワイドショーで他人の死を眺める感性の鈍さや、凶悪犯罪や鬼畜のような犯罪者に対して唾をかけるだけでそこに至ってしまった大きな不幸を思い描けない想像力の貧しさに対して、自覚させられる思いの読後でした。
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