多岐川恭 ランキング!

多岐川恭 落ちる (創元推理文庫)

第四十回直木賞を受賞した短編集『落ちる』(河出書房新社刊)に収録されていた全作(七編:くわしくいうと、このうち『落ちる』『ある脅迫』『笑う男』の三篇によって直木賞を受賞)に、デビュー作である『みかん山』他三編、あわせて十編を収めた作品集。
まず、その作風の豊かさに驚かされ魅せられます。トリックをメインに据えたオーソドックスなミステリ、抒情性豊かなもの、コミカルでユーモアあふれるもの、感傷的なもの、じわじわと増してくるサスペンスに手に汗握るものなどなど、バラエティに富んださまざまな形のミステリが楽しめます。しかも、どれもおもしろい。
こんなに優れた、しかも直木賞を受賞している作品が、長い間入手困難、なかなか読めなかったというのだから、情けないはなしです。いったいどういうことなのでしょう。本書、創元推理文庫版もすでに品切れ状態だし。月に何百点も新刊が出ているのに対して、過去の名作の扱い方といったら・・・。なんとも寒い時代ですねぇ。 落ちる (創元推理文庫) 関連情報

多岐川恭 江戸川乱歩賞全集(2)猫は知っていた 濡れた心 (講談社文庫)

は知っていた】
乱歩賞が長編推理小説の公募になってから最初の受賞作です。
作者の仁木悦子さんは幼時から病気のため学校に行かず、兄の
雄太郎氏による家庭教育を受けて育ちました。

この作品は、作者と同姓同名の、仁木雄太郎・悦子兄妹が探偵
として登場します。病身の作者を全く感じさせず、物語の中で実に
生き生きとした活躍を見せます。
扱っているのは殺人事件ですが、戦前の、おどろおどろした探偵
小説とは一線を隔する、爽やかな作品です。

【濡れた心】
女子高生の同性愛をテーマとした異色作です。
異色なのはテーマだけにとどまらない。
全編を通して、登場人物たちの日記と、刑事の手記だけで物語を進める
という構成。登場人物が全員日記を書いてるなんて、昔の人はそんなに
日記が好きだったのかと思ってしまった。
凝った構成だが、会話の羅列が続くなど、日記としてはいささか不自然。

銃の扱いにも疑問を感じた。
初めて銃を撃った人が、離れた場所から一発で被害者に命中させる
なんて事は、まず不可能です。
刑事の銃や弾丸の管理も杜撰すぎます。
寄り添って立っている二人の人物に発砲し、片方を射殺するなんて
事もしません。普通は誤射を恐れて発砲をためらいます。

この作品は、あえて推理小説にする必要も無かったのではないかとも
思います。女子高生の同性愛というだけでも、それなりに読める物語に
なったのではないでしょうか。
ただ、こんな話を、いい年したおっさんがどんな顔をして書いたのかと
想像してしまうと可笑しいですね。 江戸川乱歩賞全集(2)猫は知っていた 濡れた心 (講談社文庫) 関連情報



人気動画!