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Christoph von Dohnanyi Wagner: Der Fliegende Hollander

 ドホナーニはワーグナー指揮者として知られているわけではない。その理由は、彼がバイロイトに登場していないということと、レパートリーが古典から現代音楽まで膨大すぎて「ワーグナー指揮者」という類のレッテルが似合わないからだろう。しかし彼の振ったいくつかのワーグナー録音は、いずれも凄まじい出来映えである。奇を衒うことは一切せず、しかし現代のオケ、現代の歌手が演奏することを前提にスコアを徹底的に読み込んだということだろう。 ドホナーニの信頼厚かったロバート・ヘイルは、この録音の時に四十代後半、声量と音楽家としての成熟とが良いバランスにある頃であり、ヒルデガルト・ベーレンスは声量的には最盛期を過ぎているかも知れないが、実にドラマチックで、やはり彼女を起用しなければならなかったのだということがよくわかる。そしてウィーンフィル。同じドホナーニがクリーヴランド管を振った「ワルキューレ」と比べると、細部まで磨き抜いた仕上げっぷりはクリーヴランドの方が上ではないかという気もするが、ウィーンフィルにはウィーンフィルにしか出せない音があり、しかもこの録音の随所に聴かれる弦の生き生きとした歌いっぷりはどうだろう。この時のコンマスがゲルハルト・ヘッツェルだったのかどうか知らないが、ヘッツェルのいなくなってからというもの、このオーケストラのヴァイオリンセクションがこれほどまでに表情豊かな演奏を聴かせることはなくなってしまった。 この少し後からドホナーニとウィーンフィルの関係も悪化して、両者の協演はなくなった。ドホナーニがクリーヴランドと組んだ「指輪」全曲録音のプロジェクトも、何らかの事情で(レコード会社の都合だとか、ドホナーニとアンニャ・ズィリャの離婚が原因だとか、噂は色々あるが)完成しなかった。ドホナーニの年齢からも、もうこういう大がかりなプロジェクトはないだろう。しかし二十世紀終わりにこのようなワーグナー像が提示されたということは記憶に留めておくべきだし、この時期に演奏・録音された他の様々なワーグナーより、ドホナーニのワーグナーを我々はもっと熱心に聴くべきだった。今さら悔やんでも悔やみきれない。 Wagner: Der Fliegende Hollander 関連情報

Christoph von Dohnanyi R.シュトラウス作曲 歌劇《エレクトラ》 チューリヒ歌劇場2005年 [DVD]

ほぼ完全なモノトーンの舞台の上において、絶え間ない悲鳴のよう不協和音の中で展開する陰惨な歌劇。実母の殺害に執念を燃やす姉弟の、そして愛人と共謀して夫を殺害した女の物語。姉弟の再会劇は感無量であるとしても、彼女らは決して心から理解し合っているのではないことは、舞台演出からも明らかだ。心に憎しみを抱く者が永遠の孤独を逃れられないことを、我々は思い出さずにはいられない。これほどの醜悪な物語であるにも関わらず、この歌劇は音楽的にも視覚的にも、比べる者のない美しさを全編にわたって放ち、観る者に芸術による救いをもたらすのである。さすが、ウイーンの芸術風土は誠に深い、と感銘を受ける名作である。 R.シュトラウス作曲 歌劇《エレクトラ》 チューリヒ歌劇場2005年 [DVD] 関連情報

Christoph von Dohnanyi The Concise Oxford Dictionary of Music (Oxford Paperback Reference)

インターネットで色んなことが調べられる世の中になってきましたが、ちょっとだけ聞きかじった、気になる指揮者や演奏家を調べようとしても、時代が古かったり、あまりメジャーでなく、知る人ぞ知る的な人だったりすると、情報が載っていないこともよくあります。でも、Wikipediaなどを検索して載っていなかった音楽家でも、この辞典では見つけることができて、生い立ちや活躍した国などを、ざっとですが調べることができました。写真は載っていませんので、ビジュアル面を調べたければやはりネットに頼ることになりますが(なので、☆4つとさせていただきました)、それでも手元に1冊あると何かと便利です。この辞典、iPhone/iPodのアプリにもあるんですが(WPB Wireless Ltd)、こちらはあまりお勧めではありません。この辞典は、説明文に略語を多用しているので、最初のうちは凡例と一緒に見ないと、何のこっちゃ?となってしまうのですが、アプリ版は、なんと凡例が掲載されていません。私はアプリを先に買ったものの、判らない略語に悩まされて、結局、書籍版を購入することになりました。既に書籍版を持っていて、略語もある程度頭の中に入っている方なら、アプリも使いこなせるかもしれませんが、そうでなければ、本だけでも十分かもしれません(アプリも¥1700と、本よりもずいぶん高いですし、バグもいくつかありましたが、いくらアプリのレビューに投稿しても、なぜか掲載してくれないんですよ?! バージョンアップされるか、他からもっと良いアプリが出るといいのですが)。追記:iPhoneアプリへのレビューですが、バグ報告などを削除し、凡例が掲載されていない旨のみを書いて送信したら受け付けられました。 The Concise Oxford Dictionary of Music (Oxford Paperback Reference) 関連情報



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