火坂雅志 ランキング!

火坂雅志 風魔(中) (祥伝社文庫)

文庫の人気が思わぬ高さで、中巻から読み始めたが、まるで戦国の全ての武将の突然死が忍者による「暗殺」という新たな忍者史観に出会ったような気がした。荒唐無稽な脚本を幕府に命令された歌舞伎が、苦肉の策でデタラメだらけの筋に少しばかりの真実を滲ませたような、作品であるようだ。悪人と善人がくっきりと描かれているのはよいが、これを読んで戦国を知らない読者が勘違いすると。。。 風魔(中) (祥伝社文庫) 関連情報

火坂雅志 上杉かぶき衆 (実業之日本社文庫)

上杉景勝、直江兼続に係る、上杉家の人々の短編集です。

有名な前田慶次郎や、直江兼続の弟の話など、それぞれとても興味を持って読めました。

中でも、私が一番よかったのは、謙信の後継者争いに敗れた三郎影虎の話です。戦国時代の過酷な運命の中で、自分の立場に苦しんだり、納得しながら生き抜いていく姿に引き込まれました。

それぞれの短編が単なる史実をなぞるだけではなく、その人物の心の中にまで生き生きと描かれていてよかったです。
 
上杉かぶき衆 (実業之日本社文庫) 関連情報

火坂雅志 軍師の門 上 (角川文庫)

竹中半兵衛、黒田官兵衛の二人の軍師を描いた物語です。二人に焦点を当てているので、他の登場人物の心情までは細かく描かれていません。その辺りは、司馬遼太郎の作品のような重厚さは無いです。 軍師の門 上 (角川文庫) 関連情報

火坂雅志 覇商の門 (上) (祥伝社文庫)

夜盗、盗賊まがいか、武士のはしくれかわからないような人生から野望を抱き豪商へとのぼりつめる宗久の波乱の人生が幕をあける。
松永弾正、織田信長と主君ならずとも商売を巧みに利用し頂点へのぼりつめる姿がおもしろい。
武将ものは数知れずほど読んだが火坂氏の非武将ものはどれも読みごたえ十分な作品だ。
歴史小説210作品目の感想。2009/11/28 覇商の門 (上) (祥伝社文庫) 関連情報

火坂雅志 虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫)

昔の史家の個人的な解釈によってあまり好ましい評価を得られていなかった藤堂高虎を好意的に取り上げて頂いた事はありがたい事だと思います。

若い頃に憧れを抱いた女性を守る事を出来なかった高虎が、
愛する女性と一緒になる為には地位も経済的にも相応に充実していなければならないという事を学び、
それを信条として切磋琢磨して成長していく若き日々から
次第に、単なる武の功績ではなく建築・土木技術の実績をその時々の権力者に認められながら有力大名となってゆくその生涯を描いた物語です。

周囲に認められ出世するにしたがって対立者が出てくるのは避けては通れない事で、
石田三成との駆け引きには読む方も熱が入ります。

個人的に読んでいて展開に胸が躍った場面は、
目をかけてもらった信頼する羽柴秀長が病死し、後継者・秀保の家臣となるものの、
その秀保も石田三成の謀略によって亡き者にされて主を失ってしまい途方にくれる一連の場面に関しては、流れるような展開で良かったです。


しかし、全体としては、
「〜年にはこういう戦いがあった。ここでは例の黒漆塗唐冠形兜を身に付けた高虎が奮起して活躍した。」というように
ただの年代記のようになってしまっている部分がままある事も否めません。


また、作家というのは文体、即ち言葉・言い回しや本人なりに解釈した世界観を描いてこそ、それに対して読者は共感したりまたはその反対であったりするのではないか、
作品を通してその作家の頭の中を覗いたり、
その人の人間性から滲み出る、いわば染み付いた「クセ」のようなものを見つけ、感じ取る事が読者の愉しみなのではないかと個人的に考えています。

そういう点では、言葉の選択も世界観も全体的に無難に無難にしすぎてしまっているようで、正直あまり面白みは感じませんでした。


この作品の帯には
「『誰々(巨匠とされる作家名)』・『誰々』・『誰々』達に迫る!藤堂高虎の生涯を描いた力作!」のような感じで本作品の謳い文句が書いてあったのですが、
誰かに「迫る」のであればそれは皆自由であるし、なにも巨匠に「並ぶ」とは言っていないので確かにそれなら語弊は無いな、と妙に納得してしまいました。
虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫) 関連情報



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