町対町、役所と住民、上司と部下、そして男
三崎亜記 ランキング!
全部で9つの作品が収まったこの本は、私達の知覚とは一致せず混乱を生じさせる。
ただその混乱は不思議と不快なものではなく、その作品からの刺激を受け入れてしまえるのだ。
本物の象がいる公園など、仕事で遅くなった日には私も立ち寄って語り合いたいと思う。
個人的に一番印象に残ったのが、書き下ろし作品「同じ夜空を見上げて」だった。
世の中の客観的性質と相容れなくても、自分の心の中だけ納得したらいいのじゃないかと共感できたし、
聡史への区切りがついた解けた知恵の輪に
「星がとってもきれいだから、一人で見るのはもったいなくって」と、キイワードになるこの台詞の使い方が好きだ。
デビュー作「となり町戦争」より、私はこの本の方が面白く、かつ味わいも深い本だった。
鼓笛隊の襲来 (集英社文庫) 関連情報
著名作家たちによる、「本」をテーマとした短編集。
何名かの好きな作家の名を見つけて読み始めたけれど、
結果的にはどれも面白く読めた。
ただ、予め「短編」という編集者からの指示のもと書いた依頼原稿、ということが
ところどころ透け見えるようで・・・
各作家の魅力を最大に発揮しきれていないところがやや残念。
とはいえ、ちょっとした時間に読む短篇集として、
知らない作家開拓の第一歩、としては最適な本。
本からはじまる物語 関連情報
マンションが船になって旅をする「団地船」、突然やってきた海によって故郷を奪われてしまった「海に沈んだ町」
永遠に朝のやって来ない町のお話「四時八分」など非現実なはずなのにもしかして世界のどこかであるのかもしれない・・
そんな不思議な気持ちにさせられる三崎さんの世界観全開の短編集です。
さらにこの短編集を彩っている時々間に登場する白石さんの風景写真が読む人をより三崎さんの世界に浸させてくれます。
言葉にするのが難しい。だからこそ気になった方は一度読んでみて欲しいです。
海に沈んだ町 (朝日文庫) 関連情報
絶対に、万人受けしない本です。
舞台設定が急に変わったり、現実的なのか非現実なのかさじ加減が一定せず、
脳内で想像しにくいため読みにくいと思います。
ですが、なぜか私はこの話が大好きで、三崎さんの作品が大好きなのです。
それは、いろいろなかたちの「人の想い」が確かにそこにある感じがするからです。
また、その想いがとても静かなたたずまいで存在していて、それがかえって想いの
強さを感じさせます。
非現実的な道具立てを許容できる方には一読をおすすめします。
おそらく、「すごくいい!」か「金の無駄だった!」かのどちらかになると思います。
失われた町 (集英社文庫) 関連情報
三崎さんの作品を読んだのは「コロヨシ!!」が最初。
同じ九州人同士ということもあり,勝手な親近感のもと,
だいたい読んできたつもりです。
いつも「不思議な世界を構築する人だなあ」と思って
きたけれど,今回のは一番好き。
構成も世界観も文章も人々の思いの切なさも。読みな
がら不覚にも何回か涙ぐみました。
「徒労」とか「無駄」とかって何だろう。誰が決めるの?
世界の片隅でこつこつと,己の心に従って,胸の思い
を自分なりの形にし続ける人々の話。
私は,そんな風に読みました。
玉磨き 関連情報