女盗賊プーラン〈上巻〉
プーラン本人の言を元に書かれたが、その内容は現実味を感じないほどに壮絶だ。
まるで地獄のように思える子供時代から、プーランは盗賊の力を借りて這い上がった。まだ子供の頃に結婚してから身柄を拘束されるまで、プーランを少しでも理解する人間はほんの数人だった。そのほとんどはもう死んだ。
プーランはかわいそうな人だったのだろうか。それは読み終わってもよくわからない。ただ、「プーラン・デヴィは人間だ」それだけは確かに言える。もしかしたらそれだけを、彼女は数十年の間叫びつづけていたのかもしれないとさえ思う。
国民の圧倒的な支持を得て獄中の身から国会議員へと転身したのもつかの間、プーランは銃弾に倒れた。たった数分の短いニュースを見て、私は泣いた。この本を読んでいなければ、何の現実感もなく見過ごしていただろう。
プーラン・デヴィは全くの善人ではなかったが、確かにひとりの人間だった。
それだけは、いつまでも覚えていようと思う。
この本は、少なくとも私にとっては読み物として以上の思い入れがある。だから敢えて評価は並(☆3つ)に留めた。
黙祷。
インド社会とカースト (世界史リブレット)
カーストというと身分制という解釈をしていたが、それほど単純に解釈できることではなく歴史的・宗教的背景に政治判断も加わり複雑さを増長させている。
薄い冊子であるにも拘らず難解な語句が多く、決して読みやすい本ではなかったが、「差別的な”制度”」といういわゆる文化のようなものの入り口くらいは垣間見えた。
実は日本にも同じような制度が残っている。天皇家に仕える女官・女儒・雑仕、の仕事だ。テーブルを拭く者と、床を拭く者は違い、ひとりが両方の仕事をしたりしてはいけないのだという。またこの習慣は宮中三殿を宗教的儀式を護る内掌典の仕事にも色濃く残されている。その代表例が次清(つぎきよ)と呼ばれる穢れを忌む習慣だ。
カーストにしても天皇制にしても宗教を中心とした習慣から生まれた差別制度であるということだろう。