楡家の人びと 第1部 (新潮文庫 き 4-57)
とにかく面白い。たとえ、ブンデンブローク家の人々を読んでいても、それとはまた違う味がある。それは、市民を書いていてそこに気品が漂う作品である。
この単行本の時の読んだが、こんどまた文庫版で読むと昔見逃していた点が見えてきて、面白さが加速する。
楡喜一郎も魅力と、俗物性がいろんなめんで面白さをひきつけている。
戦後でも指折りの小説に入ること請け合い、
マンボウ家族航海記 (実業之日本社文庫)
本書は、昭和61年から雑誌に継続連載されたエッセイの中から家族内の出来事を中心に編集されたものです。御存知のように北さんは、本年10/24にご逝去され、今後も何冊か遺作が出る可能性はありますが、現時点では、これが最終刊の本です。私も40年以上前、大学生でしたが北さんの文学にはまり、楡家の人々、白きたおやかな峰、どくとるマンボウ青春期等を読み漁りました。又、この当時、精神科医の作家が輩出し(北さん、なださん、加賀さん、そうそう茂多も)、憧れたものです。
内容は、北さん独特のユーモアで家族の事を記したエッセイですが、やはり一番興味深いのは、ページ数も一番多い株騒動の事でしょう。北さんは、良く御存知のように、ソウウツ病で、ソウのときには、株式の短波放送を聞くと、まるで進軍ラッパを聞いた馬のようになって、ついつい株を注文してしまうらしいです。それも現物ならまだしも信用取引をしだすと素人では手に負えません。上がっているときはいいですが、下がり始めると追証、追証で自転車操業、実際、借金、前借、返済の繰り返し。ご家族の方は、さぞかし大変だったでしょうね!そして、そんな父親の姿を見てきた由香さんの結婚です。北さんは、娘さんの結婚式で、一度も味わわなかったなんともいえぬ感情が私を捕え、私は一瞬、両眼に涙が溢れるのを感じたと書いておられます・・やはり父親ですね!
そして、解説をその由香さんが書いておられます。由香さんは、父親のそうのときに散々な目に遭っていますから、父親の本を殆ど読んだことがないそうです。家族旅行をしたことがないとか、母親は、あのそうの狂乱時代を良く乗り切ったとか、娘特有の厳しい見方が目立ちますが、最後に、どれも懐かしい昔の思い出である。明日も父を起こして散歩にゆくが、あと何年、続けられるのだろうか・・・と文を結んでおられます。最後に少しほろっとなりました。本文以上に、解説に心打たれました!!