Rio
2011年4月9日、Rio de Janeiro、Theatro Municipalで録音。
1971年11月10日、Keithが初めてECMの為にレコーディングし、その音源を“Facing You”として発表してからちょうど40年目の今年
ECMは“Rio Project”と命名して本作品をリリースしたそうです。
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(以下、Jazz Wise誌、Keith Jarrettインタビューより抜粋)
Keith はこのコンサートの録音を初めて聴いた時、その素晴らしさに自分自身が驚いたという。
「それはこれまでの私の演奏の中でも最高に美しいもので、私はとても興奮しその演奏の虜になった。だからすぐに空港からManfredに電話してこう言ったんだ。『今我々が計画しているレコーディングのプランを全部破棄して、これを最初にリリースしよう』。私が空港から電話したことなど一度もなかったのでManfredは私が本気だとわかってくれたよ」
コンサートからリリースまでの異例なまでの期間の短さ。その事実こそがこの作品がこれまで発表したソロ作品の中で最高の部類に入るもの、いや恐らくKeithの現時点までのキャリアでベストであると、KeithとManfred Eicherが考えていることの証左である。
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美しく印象的なメロディーとハーモニーを持った曲が多く、ノリノリのBlues (Part XI) もあったりと、あっという間に楽しい90分が過ぎていきます。私が苦手としている、Tonalityの希薄な現代音楽系の曲が少ないのもありがたいです。購入してからこればかり聴いていますが、まったく飽きないどころか聴く度に新鮮です。個人的にはKeithのすべてのソロ作品の中でも最もお気に入りとなりそうです。
この“RIO”が素晴らしかったんで、次は久々にTrioが聴きたいなぁと思っていたら、ECMから嬉しい正式発表がありました。
Gary Peacock、Jack DeJohnetteとの”Keith Jarrett Trio”の作品、あ、Keithはこう呼ばれるのは嫌いみたいですね。「このTrioでは僕とGary、Jackの3人が対等なんだ。だから“Trio Jazz”とでも呼ん欲しい」と発言していますね。その「Trio Jazz」の新作、“Somewhere” が来年リリースされるそうです。2009年リリース(録音は2001年4月)の“Yesterdays”以来3年振りですね。
楽しみで待ちきれません!
バーモント・ソロ [VHS]
1977年8月末のソロ演奏、約90分。1部と2部の間にキース・ジャレットの自らの音楽、演奏に関するモノローグが差し挟まれます。
演奏自体は時にクラシカル、時にフォークロック調ではありますが、良い意味で逸脱することなく全編にわたりロマンティックなムードに彩られています。また、演奏会場が湖畔の豪邸の広い庭園(?)のような場所で、能舞台のように(!)せり出した舞台上でアフロヘアに口髭、Tシャツジーンズのキースが演奏します。観客は数十人ほどで、芝生の上に寝そべったり思い思いの格好でくつろいでいる様子。コンサート開始時は黄昏時だったのが中盤を過ぎる頃になるとすっかり日が暮れるのですが、その刻一刻と変化する空の様子の、演奏と相まって美しいことといったら!
本映像は過去LD化されたことはあるようですが、未DVD化のようです。キース・ジャレットの映像は日本でのライブ6作品がDVD化され廉価再発されているというのに、本作だけは忘れ去られている模様。DVD化希望!
The Melody At Night, With You
1曲目I Love you porgyのはじめのFの音を聴いた瞬間に、体中に音が響き渡るような感じがしました。私にとってはとても聴き慣れたピアノの音ですが、このようにピアノが鳴らされていて、音色が心の芯に染みこんで来るようなものは聴いたことはないと思います。
タイトルにも通じる、夜の静けさに透き通るような音で、自分の体も透き通っていくような、心の芯に染み込んでいく音色に知らず知らずのうちに涙が出ていました。そして、とても上品であり、大好きな人にI Love you って囁かれているようで、官能的でさえありました。キースジャレットの愛情が溢れていますね。
ピアノ教室の教え子の進学のプレゼントに、迷わずこのCDを送りました。やはり、良い意味でのショックを受けたそうです。映画 Nuovo Cinema Paradisoを見た時、最後に涙が止まらなかったことがあるのですが、それと同じ感じです。お婆さんになっても聴いていたい、一生ものの1枚だと思います。
アート・オブ・インプロヴィゼーション ~キース・ジャレット・ザ・ドキュメンタリー [DVD]
ライナーのいろいろなエピソードを読むだけで期待は高まる一方。止められず最後まで一気にみてしまいました。
懐かしいもじゃキースから最近のカリアゲキースまで、貴重な映像が動く動く。アメリカンカルテットやヨーロピアンまで、こんなのがあるとは知らなかった。早速ビロンギングやフォートヨウが聴きたくなった。トリオのものが多いのはしゃあない、しかしマイルスやロイドものまできっちり出てきます。こないだのワイト島も良かったけど、一人オルガン×エレピの筒袖キースも堪能。いやー元気が出た。
ローズアンは美人なんですねぇ、ふ~ん。メロディアットナイトは最初DATにリボンかけられていたんだって。泣かせるねぇ。鯉沼さんは(アイヒャーキャラ&ルックスを想像していただけに)あまりにも普通のおっさんでびっくり。でも逆にこんな普通の日本人のおっさんと仲良しのキースに親近感が持てたりして。連弾したころのチックはずいぶんやせていた、やはり。最近、やばいんじゃないの、やはり。
などと、取り留めもなく喜んで観られた85分なり。音楽を楽しむためのものではないが疾走する編集であっというまにキースのエネルギーの一端に触れさせていただきました。ゲポ!もう食べられない..........
Jasmine
慢性疲労症候群からようやく回復しソロでスタジオ録音した傑作「Melody at night, with you」を髣髴とさせる静謐で美しいスタンダード・バラード集。嬉しい事に偉大なベーシスト、チャーリー・ヘイデンとの約30年振りの共演盤でもある。自らの闘病と治癒の経験から得られた貴重な結実であったパーソナルなアルバム「Melody at night, with you」から敷衍して、今回は現代の病んだ世界に暮らす人々をこの作品で少しでも癒したいという思いがあったのではないか。
ジャスミンは芳香を放ちながら夜に咲く花、そのようなアルバムだから、
Call your wife or husband or lover in late at night and sit down and listen.
とライナーノートが締めくくられている。これを以て軟弱なジャズであるとか、イージーリスニングに堕しているとか批判する事は簡単だが、私は決してそうは思わない。辛い闘病を経た上での彼の発言は断じて軽々しいものではないし、実際このアルバムにこめられたキースの真摯な思いは聴く者の心の奥深くまで届く。そう、良き伴侶、良き恋人とこの美しい音楽を聴きながら静かな夜を過ごす事は人生においてとてもとても価値のあることなのだ。