アット・ジャズ・カフェ・ボサ・エディション
60年代の音楽シーンを代表する音楽ジャンルが「ボサノヴァ」でした。
このCDは、「ボサノヴァ」のベスト・アルバムとも言えるほど代表曲を全部聴くことが出来て大変お徳です。
当時、日本の音楽ファンに「ボサノヴァ」のリズムと雰囲気を伝えた「セルジオ・メンデスとブラジル66」の代表作「マシュ・ケ・ナダ」から、私は「ボサノヴァ」のファンになりました。ジャズやポップスのアレンジが冴え、心地よいサウンドに仕上がっています。
有名なアントニオ・カルロス・ジョビンの作曲した「イパネマの娘」を改めて聴きました。ジョアン・ジルベルトもいいですが、元妻のアストラッド・ジルベルトの歌う「イパネマの娘」は、40年経った今でも「ボサノヴァ」の代名詞です。小野リサもいいですが、アストラッド・ジルベルトはとても上手ですね。
スタン・ゲッツと一緒に演奏した「コルコヴァード」も同様です。ジャジーな演奏は、今聴いても新鮮です。この軽快さが、「ボサノヴァ」の醍醐味ですね。
スタン・ゲッツは、ジャズの世界で活躍しましたが、アメリカにおいては、60年代初頭のボサノヴァ・ムーヴメントの立役者たといえると思います。
アントニオ・カルロス・ジョビンはすでに亡くなりましたが、「ボサノヴァの神様」と呼ばれたジョアン・ジルベルトは、70歳を越えてまだ健在でなによりです。スタン・ゲッツとの「オ・グランジ・アモール」のジャジーな演奏は、今聴いても新鮮です。この後、スタン・ゲッツと袂を分かったジョアン・ジルベルトは隠遁生活といってもいい生活を送ります。きっと彼の気持ちに何かが起こったのでしょうね。ジョアン・ジルベルトのささやくような歌声は、疲れた現代人にとっては、「ヒーリング・サウンド」といえましょう。
「ボサノヴァ」の音楽が久しぶりに部屋を満たしています。とても明るい光が室内に入ってくるような気分で聴いています。肩の凝らない音楽っていいですね。
コラボレイションズ
Hip HopやJazzなど、様々なジャンルの様々なアーティストとの共演曲をまとめた1枚。
それぞれのアルバムを揃えるのは手間もかかるし、何よりお金もかかってしまうので、
こういった作品は本当に嬉しい贈り物です。
また曲をただ並べるだけではなく、曲間や曲順も考慮されているようなので、
最初から最後まで違和感なく自然に聴けてしまいます。
オリジナル・アルバムとはまた違った、Jillの「歌」を存分に堪能できる作品だと思います。
(国内盤には各曲の解説がありますので、個人的にはこちらをオススメします。値段は少し高くなりますが;汗)
Timeless (Dig)
ブラジルボサノバ界の「巨匠」と今や呼んでも差し支えないであろうセルジオ・メンデスの新譜は、
何とHip HopのBlack Eyed PeasのWill I Amとのコラボだった。
そのカップリングだけでもインパクト十分だが、聴いてみたら音もすごい。
何とも、セルジオの世界とBEPの世界がいい具合に融合している。
結構合うんですよ、ボサノバとヒップホップは。
まあそれも、元の楽曲の良さと、Willのチューナーとしての腕の良さがあってのものだろうけど。
ボサノバ、ヒップホップ、どちらの入り口から入っても楽しめますよ、このCDは。
しかしいいおじさんになって、さらに新しいことにチャレンジするセルメンのバイタリティには脱帽です。
モーニング・イン・リオ(期間限定特別価格)
ブラジルのリオではボサノヴァを聴く人はほとんどいなくて、著名なアーティスト達の収入源は海外での活動だと聞いたことがある。セルジオ・メンデスの流行に日和ったような最近の音楽を聴いてまったく納得がいかなかったのだが、若者にも聴きやすい今風のアレンジを取り入れ少しでもブラジル音楽を聴いてもらおうという気持ちからこのような作品を作っているのかなと思うようになった。とりあえずブラジル音楽を聴いてもらって興味をもってもらうことが大切なのだろう。この作品に収められている曲もブラジル人アーティストによるものがほとんだし、ブラジル愛は感じる。過去の名曲を新しいアレンジで紹介して、興味を持った人がそれから遡ってオリジナルを聴けば良い。私はやはりどの曲もオリジナルの方が好きで、このアルバムのアレンジには違和感があるが、若者にはこちらの方がとっつきやすいのかな。でもセルジオ・メンデスにとってこのアルバムはブラジル音楽に興味を持つ若者が生まれれば成功なのだと思う。ブラジル音楽の伝道師みたいな。
内容は表題曲はトニーニョ・オルタの曲ですね。本人もギターを弾いております。他の曲でも何曲かギターを弾いております。でも、あくまでもサポートに徹したプレイですのでソロのスペースが少ないのが残念。日本盤ボーナス曲はいらなかったですね。完全に浮いています。それに吉田美和の暑苦しい唄い方はMPBにはまったくハマリません。
タイムレス
2006年発表。このレビューを書く現在で一番新しいアルバムなのは確かなはずです。でもふしぎと「何だかなぁ〜」という気分になります。曲が悪いとかではありません。一曲目の「マシュ・ケ・ナダ」のブラック・アイド・ピーズとのコラボレーションによるヒップホップヴァージョンは新鮮に響きます。しかし2曲目、3曲目と聴くうちにある感想が浮かびます。
「ヒップホップのコラボレーション相手は別にいらないんじゃないか?」と。曲の入りがライム(ヒップホップの歌唱法であるラップ風の早口)で始まる曲が何曲か入っています。最初は刺激的でかっこいいんですが、それだけだと刺激に慣れたらワゴンセールで並びそうなフツーのヒップホップ。そこにセルメンの爽やかなメロディが入ると曲が急に涼しい美しさに彩られます。
つまり、本作の趣旨である「セルメンとヒップホップの融合」が実力的に相手と五分五分で達成できているのは(1)など数曲しかなくて、あとはどちらかというと消費されやすそうなヒップホップがセルメン独自のアレンジマジックによって耐久性を与えてもらっているという、音作りでの圧倒的なセルジオ側の優位性や助ける姿勢が目立つ構図なんですね。ライナーノーツのセルジオ自身のインタビューも何かそういう意図を匂わせるものがあります。ヒップホップが好きな人には結構深刻に考えさせられる問題が提起されてますね。
企画盤としてはとても面白いんですが、セルメンのアルバムとしてはディスコグラフィー史上最も早く古びそうな音ではないかと思います…と思っているうちに、もしかしてこのアルバムの題名は逆説的に自分達の普段の音楽の凄さを表しているのかも、とひらめきました。だとしたらすごい自信ですね。まあ別にそれくらい自信があっても当然の経歴なんですが。