トランスジェニック・ラボラトリ (TSコミックス)
性転換・異性装・魂の入替をテーマにした季刊誌「チェンジH」に掲載されていた、誌内随一のハードSF漫画です。
バイオテクノロジーが進んだ近未来、人間のクローンは国際機関により厳密に規制されており、処置を許されているのは世界でもその代役が居ない僅かな「エタニティ」と名付けられた要人だけです。
彼らを保護する陣営と宗教的理由からクローンの存在を認めない過激派との知略を尽くした戦いを描いています。
この様な政治サスペンスに入り組んだジェンダーと人間とは何かと言うテーマを、度重なる暗殺により正規クローン(♂)の熟成が間に合わずに予備ボディで復活した長官「サカキ(元♂)」と巻き添えで肉体を損傷し、補修までサカキの未成熟なクローン体(♂)を仮住まいとしている子供「リー(元♀)」、そしてテロリストが作り出したトランスジェニックの若き暗殺者シン(元?) 3名を主人公にして描いている為、相当ややこしいのですが、2度ほど読めば理解出来ます。
掲載誌の他作品では滅多に無かった性転換発生の説明がしっかりとなされており、本設定を単なるエロティックな小道具に落とさない厦門氏のこの分野に関するマニアックさ伺える作品でした。
設定はハードですが、人物描写は自分もジェンダーの混乱に戸惑いつつも、より弱い立場のリーを気遣うサカキを始めとして、繊細な優しさが感じられる良作です。
連載作品に加えて、本編の後日譚が書き下ろされています。
繊細かつちょっとハードなSF漫画がお好きな方にはお薦めです。
破妖の剣 2―深紫絃韻 (YOUコミックス)
動きの少なかった闇主がラスに名を呼ばれてやっと動き出す。
原作でも名場面中の名場面が厦門先生のマンガで見れます。
破妖シリーズでも貴重な○×シーン!(敢えて言いますまい)
このシーンのためだけでもこの本は買いです。
ラスが「私は私だ」と言い切るあの場面も見れます。
原作通りなのでラストは「---」なんですが・・・・
魔性の佳瑠とセルヴァンテスの恋愛も密かな裏テーマ。
破妖ファンなら美味しすぎる1冊です、ゼヒどうぞ。
一緒に暮らすための約束をいくつか 1 (芳文社コミックス)
親友の娘(JC)と同居する35歳の男が主人公。
男の後輩女性と合わせての三角関係モノ、になるのかな。しかしそうも簡単ではないようで、愛情、友情、いろんな感情が交錯します。
絵柄は完成されていて、とても上手い方だなと思います。好みです。
また、成人誌で培ったH描写も素晴らしく、エロ担当のキャラは結構脱がされます。
厦門潤名義での活動もある作者ですが、エロ用のこちらの名義ということは、期待してよいぞえ、ということでしょう。といっても、作者曰く「エロは当社どんぶり比7割減」だそうですので、それなり。パンツは履いてください。
近作同様、ややダメ男と出来るオンナで構成されています。しかし、存在が不快になるようなダメさのメインキャラはおりません。みな、キャラが立ちつつイキイキと動きまわるのが、家鴨先生の作品のよいところだと思います。第1巻ですが、比較的短編の作品が多い作者ですので、展開は速い。一気に読めてしまいます。
ちょっと気になる所で今巻は引きとなります。脳天気に見える主人公にも、何か秘めた想いがあるような。さてどうなるの。次巻が楽しみな作品がまた一つ増えてしまいました。今後の期待も含め星5つ。まあ、期待を裏切るような作者ではありませんが。