Best Sky
夏の気だるい暑さや、寒い冬の朝。
電車やバスに乗ったり、コーヒーにミルクを落としたり。
サニーデイの世界に触れると、そんな日常がドラマティックに変わってしまう。
このアルバムは、曽我部恵一という男子の「青春」の断片を切り取ったもの。
これから恋をして大人になる
若者たちに是非聴いてほしい一枚です。
本日は晴天なり
10.10.10 サニーデイサービスを初めて見た。
瀬戸内アートフェスティバル開催中の高松で。
曽我部恵一は香川県出身。今回のライブは全国10ヶ所のみ。四国は高松だけでの開催ということで、高松に見に行った。
そのついでに、アートフェスティバルを見たわけだ。
いや、ついでではない。曽我部恵一と瀬戸内アートフェスティバルには関係があった。
美術手帖増刊号として発刊されたアートフェスティバル公式ガイドブックの75ページに曽我部のエッセイが掲載されているのだ。「19歳、やさしい波と音楽。」という。
そこで曽我部は高校卒業後に岡山で送った2年間の浪人生活を回想している。高松ではなく岡山の予備校を選んだ理由は、中古レコード屋がたくさんあったから。毎日レコード屋に通って夕方まで音楽を聴きあさっていたという。そしてマリンライナーで瀬戸内の波を見ながら、彼は家に帰ってから聞くレコードの音楽を想像していた。
さて、サニーデイサービスのライブ、すごい良かった。
今日本で見られる最高のロックバンドだと思う。
曽我部恵一はソロで、そして近年は曽我部恵一バンドとして精力的に活動している。ストレートで激しいロックをやっている。
そして8年ぶりにサニーデイサービスを再結成し、10年ふりにこのアルバムを出した。
曽我部恵一バンドもいい。でも今のサニーデイサービスこそロックだと断言する。
僕は、ロックに不可欠な要素は「痛み=PAIN」だと思っている。
そして昨日サニーデイサービスを見て気づいた。もっと重要なものは「真摯さ」だということを。
昔のメンバーをリスペクトする曽我部の姿勢、そしてオリジナルメンバーのベースとドラムの二人に「真摯さ」を感じっぱなしだった。この二人は今も演奏はあまり上手ではないのだが、この二人がいないとサニーデイサービスにならない。曽我部も今サニーデイをやってる自分がいちばんロックだってことを自覚していると思う。
曲のことを言えば、二十歳の女の子を踊らせつつ、気難しいことを言う年上の男もうならせる懐の深さ。個人的にはPINK MOONとサマーソルジャーにやられた。サマーソルジャーはライブの最後で、バンドも客席も完全な状態になっていて、とうとう涙が溢れてしまった。
そして今日、瀬戸内の島にわたり、曽我部恵一の予備校時代に思いをよせた。曽我部恵一は研究熱心だった。本人もエッセイで言うように強烈な貪欲さで音楽を吸収した。そして曲を書き続けた。スライ・アンド・ファミリーストーンやジーザス・アンド・メリーチェインやモンモクローム・セットや、そしてニール・ヤングそっくりの曲も書いた。好きだからしょうがない。とにかく曲を書き続けているし、ロックし続けている。素晴らしい!
サニーデイ・サービス
本人たちも認める「バンドとしてのサニーデイサービス」の最盛期にリリースされた、四枚目にしてセルフタイトルの「牛盤」。
一曲目『Baby Blue』から、非常にラフでアコースティックな音の響き。この落ち着いたトーンがアルバム全体を支配していて、このアルバムならではの雰囲気を醸し出す。ビートルズやらニールヤングやらニックドレイク(『PINK MOON』!)といった昔のアーティストの枯れた味わいを器用に抽出し、表現したい雰囲気に見事に転化している。また、曲のタイトルやら歌詞の中やらにも先人からの気の利いた引用が見られる。ジャケットも『原始心母』だし。
曽我部のソングライティングは『東京』以降はずっとハイレベルであるが、このアルバムにおいてはシンプルで楽器の生々しい音が響きやすい曲をずらりと並べている。SSW的で多少地味ではあるが、非常にメロウで落ち着いた、味わい深い楽曲揃いである。また、これらの楽曲が並ぶことで作り出すアルバム一枚を通しての雰囲気も抜群。アルバム終盤で爽快なロックを二曲連発した後、『bye bye blackbird』でしっとりかつ壮大に締める頃には少し寂しくも快い味わいが残る。
ジャケットの牧場が象徴的だが、このアルバムは曽我部の全作品中でもとりわけ牧歌的な性質の強いものである。東京の地名は出て来ないし、街が出て来ない曲も多く、代わりにノスタルジックでうっすら叙情的な言葉が並ぶ。まるでどこか閑散とした風景を旅しているような、そのような寂しさと草の香りとメロウさがある。数ある曽我部作品中でもこうした切なくも綺麗な風景を想起させるサウンドとしてはこのアルバムと『MUGEN』が双頭だろう。
雰囲気作りと並んで、このアルバムのとりわけ心地良いところは、その演奏の妙にある。いなたさ全開の演奏の中でも、とりわけ日本のポップシーン史上でも類稀な弱々しさ(失礼!)を見せる丸山晴茂の、少しモタり気味でバタバタしたドラムが、間違いなくこのアルバムの演奏のグルーブの中心を形作っている。ヘタウマと呼ぶにはあまりに心地良いユルユルのタイム感がこのアルバムの牧歌的雰囲気に完全に合致しているという意味で、このアルバムはサニーデイというバンド独特のグルーブの完成を表している(これは同時にこれ以降のバンドのキャリアを苦しめることになるが)。
サニーデイのアルバムは『東京』から現在の最新作『本日は晴天なり』まで、どれも高品質でまたそれぞれの趣を有しているが、このアルバムの持つ「個性」はその中でもとりわけ特殊でそれ故に尊い。
東京
1996年当時は「はっぴいえんど」の系譜上に紹介されていた
バンドだったと記憶しています(違ってたらごめんなさい)。
YMOフリークだった私は、YMO→細野さん→はっぴいえんど
→サニーデイサービスとアンテナに引っかかりました。
10年ぶりに聴き返していますが、いいものはいいですね。
特に「あじさい」が気に入っています。