リトルメロディ
「魔法が解けてゆく」 サーカスナイトのフレーズ。かつてファンタジーの中に天使を探してさまよっていた少年。そして、そんな少年は七尾旅人という名前の、彼であり、僕だった。 僕は七尾旅人と同世代で、何度彼に救われたかわからない。 3.11以降、ファンタジーというモノの脆さ、現実という重さ、想像つかないほどの苦悩、その中にこの旅人はいたのだろう。だけど、もしも誰かが、「リトルメロディ」を見つけて、口ずさんだのなら。 たくさんの人に届けばいい。世界も現実も自分も他人も、なにもかもを繋ぐ魔法としか呼べない"うた"が、この61分弱の時間には詰まってる。
ビリオン・ヴォイシズ
七尾旅人の音源がリリースされるたび、いてもたってもいられなくなってしまい、試聴もそこそこ、すぐに買っては何度も聞いてしまう。つまり結構なファンですが、可能な限り冷静にレビュ。
「真剣な音楽は、深刻でなければならない」という呪縛からは、一歩解き放たれたかなという印象。
先行してリリースされていた「Rollin' Rollin'」の軽いフットワークはすばらしい。「どんどん季節は流れて」は、まるで70年代の良質なソウルミュージックを聞いているように心が安らぐ。純粋に楽しい。しめくくりの「私の赤ちゃん」は七尾旅人にしか作れないものだろう。
ただアルバム全体としては、まだまだ重い。暗いのではなく、重い。「I Wanna Be A Rock Star」も「あたりは真っ暗闇」も「1979、東京」もいい曲なんだけども、重い。
「足が地についたものを」という意識がそうさせているのかもしれないが、七尾旅人は、もっと軽くてもいいのではないかと思う。古いもの新しいもの、明るいものも暗いものも、生きたい気持ちも死にたい気持ちも、なにもかもをぐちゃぐちゃに詰め込んでいながらポップに飛べる、それが七尾旅人のすごいところだと思っているのだが、まだなんとも重い感じがする。(「ひきがたりものがたり」あたりから重い方向に進み始めたと思っている。そして「ひきがたりものがたり」は傑作だった)
これは単なる私の好みかもしれないが、七尾旅人は、そろそろ、もっと軽くなる方向を目指してもよいのではないだろうか?「どんどん季節は流れて」に感じられる「軽さ」をもっと追求してもいいのではないだろうか?音を削り、音楽を研ぎ澄ませるだけではなく、軽い音を持ち込むことで軽薄になる。「軽い」音楽にもまだまだ豊穣な実りは残っているだろうし、七尾旅人であれば、その新しい実りを獲得できるはずと思う。
もちろん七尾旅人自身が、飛ぶことではなく、土着性やさらに深く潜ることを志向してるのであれば、仕方ないのだが、もう一度「萌えの歯」の七尾旅人を聞いてみたい。いろんな経験を潜り抜けてきた後の七尾旅人が鳴らす「夜、光る」を聞いてみたい。「検索少年」はあともう一歩。まだまだまだまだ行けるはず。
とはいいながら、すばらしいアルバムです。七尾旅人が、今も変わらず自分自身と音楽に真摯に向かい合っていることだけは間違いないと思います。
remix (リミックス) 2009年 10月号 [雑誌]
remixをいつから読み始めたか定かではないが、自分の音楽史を語る上で避けることのできない謂わば"テキスト"である。
サイズが大判にかわり、いままでも素晴らしかったフォトがさらに素晴らしく、内容も申し分ないほどに充実し、この内容でこの低価格! もう一生ついてきます!(笑)と本気で思ったのも束の間、季刊へ移行とのアナウンス。
とても残念。 アナウンスが廃刊でなかったことが唯一の救いかも。
とにかく、今号も入魂の内容。
とくに七尾旅人、SEEDAのインタビューは真に迫り、読み応え十分。
すぐにでも月刊に復帰を願いつつ・・・
MUSIC MAGAZINE (ミュージックマガジン) 2012年 09月号 [雑誌]
フルシアンテの新作記事がよい。何でも最近のジョンはロックを聴いていないとか。クロスビートにも似たようなことが書いてありましたね。もうジョンはレッチリである必要はないのだな。
「ザ・エンピリアン」のようなゲージツロックは期待しないほうがいいと、聴いてもいないのにわかって?しまいました。
フルシアンテには奇っ怪なものを期待しましょう。あと、また「七連作」まがいのことをやって欲しい。ぼくらはやはりジョンなしには生きられません。まあ、またレッチリに入っても聴きますが。