ラリー&リー
カールトン、リトナー共に1970年代後半からフュージョンシーンを築いた名ギタリスト。お互いに意識してか競演らしい競演は記憶にない。
今回このアルバムで競演を果たしているが、彼らの音楽スタイルの違いがこれほどまでに際立った作品になるとは思わなかった。
意識的にかカールトンのES335の使用頻度は低く、代わってフェンダーストラトキャスターのハーフトーンの美しい音色が印象に残る。
ストラトキャスターのハーフトーンをこれだけ美しく残したアルバムも少ないのではないか。
一方リトナーはお約束のギブソンES335が中心。こちらは相変わらずのサウンドでリトナーらしさが出ている。
聴き所は、2人のアプローチの違いにつきる。カールトンは、ポジショニングを横に取った運指
で(と思われる。)ダイナミックスに溢れている。
一方リトナーは、軽いタッチでフィンガーボードを縦に使ったポジショニングを取っていると思われる。
弾いているフレーズは同じでもニュアンスがまるで違う。フレーズを譜割りしにくいカールトンに対し、正確無比なリトナーといった感じで興味深い。
アドリブパートになるとその傾向は特に強く、ブルースベースのカールトンとJAZZベースのリトナーといった感じか。
オクターブ奏法のリトナーにチョーキングビブラートのカールトン...まったく対照的である。
全体的に企画物にありがちな退屈感はない。作品についてもおのおの持ち寄った曲だったりと
聴いていても楽しめる。軍配は上がらずかな。
ライヴ・アット・モントルー 1996&1991/92 [DVD]
こちらの公演のほうが、楽しめた。4曲 上に表記がないので、追記しておこう。
1991 01Footprints 02On The Milkyway Express
1992 01Pinocchio 02Peewee/theme p:herbie hancock
ギターがうるさい。90年代前半にありがちなんですが。
ナイトドリーマーよりウェザーリポート時代が好きな方は楽しめる内容では。
ビヨンド・ワーズ
2002年リリース。まさにボビーでしか表現できない世界がここにある。
彼のこの作品を聴いていると彼の持つボイスの無限の可能性を感じずにはいられない。それ故にチック・コリアをはじめとして彼とアルバムを作りたいミュージシャンがたくさんいるのだ。たとえば自分の弾くピアノが彼のボイスと組み合わさると全く予想もしない音楽ができあがる。そこが競演するミュージシャンにはたまらない魅力なのだと思う。
ここでの音楽にジャンル分けとか不可能だ。彼の音楽は彼にしか作れない。
TUTU
一般的にこのアルバムはマーカスミラーがベースのサウンドメイキングを担当して、その上でマイルスがソロをやっている作品とされている。でも、それは少し違っていて、マーカスミラーが全てやっていたら、サウンドの全体的な色や匂いが少し違って来たと思います。マーカスミラーがサウンドメイキングを確かに大幅に担当している。しかし、マーカス一人でこのアルバムのベースを作っている訳ではなく、アダムホルツマンや、ジェイソンマイルス達が非常にセンスのある仕事をしているところがキーポイント。また、"Backyard Ritual"は、完全にジョージデュークがプロデュースであり、マイルス、ポーリーニョ、マーカスを除いた楽器は全て彼が担当している。何が言いたいかと言えば、全体のサウンドに甘くてキュートな感じして、どこか南からの風も吹いて来ている肌触りの良いサウンドになっているのは、上記に挙げたミュージシャン達が少しずつ貢献しているからだということ。そして、最もすばらしいのは、マイルスのミュートの音。時代によってスタイルは変わっても彼の出す音は変わっていないと誰かが言っていたが、それもやはり少し違っているのでは? このアルバムでの彼のプレイは少しラテンの影響を受けて、多分カリビアンと思われる影響を受けた音。それがこの作品に明るさを与えていると思う。
P.S. ジャケットの写真は、写真家の裏側に石岡瑛子がいるなとすぐ分るセンス。 CDになってからは、彼の手を写した写真が無くなってしまっているが、あれは綺麗にとれていた。マイルスの手は美しかった。