島原大変 (文春文庫)
「島原大変」も十分に面白いのだが、個人的には解説の西木正明さんも好きだと言う「ひとうま譚」をオススメしたい。
豊後の岡藩の九重連山が舞台。山好きの奇妙なお殿様(中川久清)に振り回される周囲の人間の悲哀を描いているが、九重に登ったことがあれば、面白さは倍になる。山好きをニコニコさせる時代小説というのは他に思いつかない。同じ九州人の松本清張に「西海道談綺」があるが、設定としては凡庸な山岳修験を描いたもので、英彦山に登ったからと言って、面白さが増すということはない。
山を描いた時代小説が少ないのは、おそらく、江戸時代には山登りを楽しみと感じる感覚はなかった、というもっともらしい話が影響しているのだろうが、こりゃ単なる俗説。江戸時代だって、大船山の鮮やかなミヤマキリシマに歓声を上げ、豊かな温泉に驚き、頂上からの眺めに感嘆していたはずなのだが、昔はその感覚を赤の他人に言葉で伝える能力も必要もなかったというだけの話である。
白石一郎なので、当然、筋立てもひとひねりしてあるのだが、珍しく留保なしの向日的な結末も心地いい。
他に大友義鎮を描いた「凡将譚」、豊後森藩主の狂気を描いた「海賊たちの城」。こちらはいつもの白石一郎。
海王伝 (文春文庫)
前作「海狼伝」は時代小説にはあまりない海洋もので大変新鮮であった。 しかしこれはそれぞれの分野で超人的とまではいかなくても素晴らしい能力を発揮する者を、"たまたま"拾って船員に加えるなど、安易な筋立てが目につくようになった。 終わり方もちょっと中途半端なのですが続きは書かれるのしょうか?
鏡の中の野心 [DVD]
女優ひし美ゆり子。子供のアイドル(「ウルトラセブン」のアンヌ隊員)から大人の女神へと華麗な変身を遂げたアッパレな女優!
そのひし美ゆり子が、スクリーンに肢体を惜しげもなく投げ掛けた第一作目の記念碑的作品。
荒木一郎はせつな的に生きる詐欺師。個性的な荒木との情交に、ひし美の切ないほどの裸身がどこまでも眩しかった。
映画館でのリバイバル上映もままならない作品。買わなきゃ損です。
海将(上) (講談社文庫)
余りにも有名な秀吉の天下人への立身出世とこれまで出生があまり知られていなかった小西行長の立身出世が見事な関連付けで描かれており、
戦自体もこれまでとは少し違った視点で描写してあり、なかなか読み応えがあった。
航海者―三浦按針の生涯〈上〉 (文春文庫)
私事ながら、在住の横須賀から横浜までの通勤に京浜急行と言う私鉄を使っています。
小宅の最寄り駅から横浜よりに少し行ったところに『按針塚』と言う駅があります。
残念ながら特急の止まらない駅なので普段は通過しているだけですが、横須賀に住み始めた十数年前から三浦按針のことが何となく気になっておりました。(ウイリアム・アダムスの名前だけは知っていましたが・・・)
今回アマゾンでこの本を見つけ読んでみました。
ウィリアム・アダムスの生きた軌跡、当時の時代背景、家康をはじめとした人物描写それぞれが上手くまとめられた楽しい読み物と思います。特にカソリックとプロテスタントの争いについては今までの認識を新たにさせられました。(それによって、なるほど!と合点がいった事柄もいくつかあります。)
漫画『ワンピース』の大ファンである大学生の愚息も(普段あまり本は読まないのですが)、面白いと言って読んでいました。
一度近い内に按針塚を訪ねてみようと考えています。
因みに、『按針塚駅』の横須賀側の隣の駅名は『逸見』であり、この本で描写されていた三浦按針が250石持ちとなった相模の国逸見村からの由来と知り納得がいった次第です。