新装版 カディスの赤い星(上) (講談社文庫)
直木賞・日本推理作家協会賞受賞作であり、作者の魅力の詰まった代表作。
PRマンの漆田は、日野楽器がスペインから招いた著名なギター製作家ラモスから、サントスという日本人のギタリストを捜してほしいと頼まれる。20年前ギターを求めスペインを訪れたサントスの腕は認めたものの、製作が追いつかずギターを譲れなかったことが心残りになっているというのだ。
卓越したギターの腕を持ちながら帰国後忽然と姿を消してしまったサントス。サントスを探す漆田は、彼の息子と思われるパコというギタリストをてがかりにサントスの行方を追うが、やがてラモスがサントスを探す理由の一つに行き当たり、巨大な事件の波に飲み込まれていく。
上巻では、「カディスの赤い星」の正体とそれに込められた目的が明ら!かになる。
サントス探しの他に、「カディスの赤い星」の正体、ライバル会社太陽楽器のPRマン理沙代との恋、「全日本消費者同盟」槙村との対決、テロと、読者を飽きさせない要素がふんだんに詰まった作品である。
「スペイン」「広告業界」と、この作品後の作者の方向性がみられる作品であり、まさに直木賞に値する作品である。
本作品は、1986ミステリー・ベスト10国内部門4位にランキングされた。同年は2位に
もう一つの代表作「百舌の叫ぶ夜」がランキングされており、作者の大ブレークした一年となった。
兇弾 禿鷹ⅴ (文春文庫)
禿鷹シリーズは好きで文庫でずっと読んでいました。前作で禿鷹が死んだ時
正義の味方が出てこないこのシリーズを好きだった私はがっかりしておりました。
禿鷹のクールで悪徳なキャラは代わりの登場人物では埋めきれませんでしたが
ストーリーはなかなか面白かったです。
あの悪徳の禿鷹に迷惑をかけられつつも、変なシンパシーを感じていたのか
手を組んで復讐に動くという設定が良かったです。
あと、唐突にメインステージに登場の禿鷹の妻。魅力的でした。
裏帳簿の奪い合い、悪徳な警察関係者の暗躍。
面白かったです。
ただ、やっぱり一味足りないのです。
時代を遡って禿鷹を生き返らせてほしい・・・と思うワガママな気持ちが強くなりました。
こちら葛飾区亀有公園前派出所 小説 (集英社文庫)
本書は超長寿漫画「こち亀」の連載30周年を記念して出版されたノベライズだ。日本推理作家教会に所属する中堅から大御所までの作家7名が寄稿している。シリーズ小説として人気の高い「新宿鮫」や「池袋ウェストゲートパーク」の登場人物とこち亀の主人公両津勘吉の競演が本書のウリのようだ。しかし読んでみると、鮫島やマコトとドタバタを繰り広げる両さんよりも、京極夏彦や東野圭吾描く両さんのほうが原作のイメージに近いし、純粋に面白かった。
京極夏彦「ぬらりひょんの褌」は大原部長が学生時代に遭遇した妖怪ぬらりひょんの正体が、数十年の時を経て暴かれる話だ。京極夏彦の十八番である妖怪談とこち亀ワールドがみごとにミックスされていて面白い。
東野圭吾「目指せ乱歩賞!」これは乱歩賞の賞金と印税に目がくらんだ両さんが乱歩賞へ応募すべくめちゃくちゃな勢いで小説を書き始める話なのだが、その様子がとにかくスゴイ。両手両足で4つのキーボードを操り、用紙やインクの補充が間に合わないほどのスピードで印刷を実行、ついにはPCが火を噴いてしまうほどなのだから、両さんの人間離れぶりは原作にも引けを取らない。さてこの話。オチは賞選考の過程や曖昧さを熟知しているベテラン作家ならではのもので、なかなか興味深いものになっている。
それにしても連載30年ってちょっとスゴイ。
30年の間、原作者の秋元治は1度も休載せずに描き続けたというのだから頭が下がる。
オールタイム・ベスト 映画遺産200 外国映画篇 (キネ旬ムック)
納得のベストテン。ベストテンを挙げろと言われると結構難しいものの、ベストテンを眺めていると納得してしまう。まあ、古いタイトルが中心なのは当たり前か。ただ、最近の作品、グラン・トリノがベストテン入りとは驚き&うれしい。年末年始のDVD鑑賞の参考にしたい。