Trans-Europe Express
クラフトワークのコンセプトが完成したアルバム。
機械的なビート(非人間的をめざしたボイス)。
ミニマム的な曲展開(スティーヴ・ライヒとある意味双璧)。
ショールーム・ダミーに代表されるような非生物への投影(アルバム・ジャケットの写真のこだわりもそれを現している)。
今聴けばまさにこれは現代の音だ。携帯電話やパソコンの持っている音やリズム。彼等は20年以上前にそこに到達していた。
放射能(ラジオ-アクティヴィティ)
前作「アウトバーン」がアメリカでトップ5に入るという信じられないようなヒットを記録した世界中から注目を集めていた時期にリリースされた5作目、次作以降のディスコ路線で話題性やヒットを記録した作品に比べると本作は地味で、レビューも本作は少ない。あまり評価されていない作品のような気がする。内容は前作に比べて見劣りする内容ではなく、前作よりもつくりが丁寧で、メジャーになったことを意識して制作されていると思う。キラーカット(最も聞きやすいものひとつ選べと言われれば)は2曲目の「放射能」で、放射能をイメージしたかのような不協和音のシンセ音やバチッ、バチッとした無機質なドラムが巧い。全ての曲がラジオという言葉に関連していて、ふざけたタイトルが笑える最終曲の「オームスイートオーム」が個人的なベストトラック、トータルタイムが短く、「えっ、これで終わり」といった余韻が残る作品だが、アメリカンロックに飽き飽きしたベトナム戦争終末期の混乱したアメリカ社会にとって無機質で難解なジャーマンロックは新鮮だったに違いない。この動きは70年後期のデビッドボウイの作風に大きな影響を与えることになる。