名古屋と金シャチ NTT出版ライブラリーレゾナント007
好奇心が最大の駆動力になっているようにみえる井上章一氏の長編評論。名古屋城の金のシャチホコが持つ地元・名古屋での意味と価値について、歴史をたどり、お城から離れた周縁をさぐり、さらに「名古屋芸者」の話にまで探索の手を広げての、芸達者な書きぶり。非在住者にはうかがい知れぬ「金シャチ(および名古屋)」のナゾがここまで解明されるとは、と感心させられた。上に挙げた芸者の話がややくどい印象もあり、また井上氏独特の「漢字少なめのかな交じり文」が文意をたどるのに時々邪魔になる箇所もあったとはいえ、それらをおいても、平明でバランス感覚とユーモアを兼ね備えた叙述になっている。