砂の器 サウンドトラックより ピアノと管弦楽のための組曲「宿命」
ドラマ版を見て感動した後、映画版をみました。
どちらも良かったのですが、音楽はこちらの映画版の方が良かったと思います。
CDが2種類ほど出ていますが、純粋に組曲「宿命」を聴いたい方は、親子が岸壁で祈っているジャケットのCDを購入したほうが良いです。
もう一枚のほうは、映画で流れた宿命ををそのまま録音した物なので台詞や拍手が混じります。その上、映画中には流れていない歌詞付きの曲が2曲入っています。当時の方には分かるのかもしれませんが私には解りませんでした。ご参考までに。
砂の器〈上〉 (新潮文庫)
以前映画で見たものであるが、原作のほうが緻密な展開である。また、映画では社会問題風のところが強調されがちであったような気がするが、原作ではあまりそうでない気がした。ただ、昔の作品なので、今の常識では若干異常と思われるような点も存在した。
この小説はもとはミステリーものとしてあり、そこに社会問題を潜り込ませたような感じだ。あまりに善良な被害者をも殺してしまうようなほどに犯罪者の動機を形成させてしまうほどの圧力、または、出世主義にとらわれた人間の恐ろしさ、というものを感じさせる。もし自分だったら、確かに殺るだろう、ということを考えさせられる。
いずれにせよ、出身などによって差別されない社会ができればいいのだが。
親不孝長屋―人情時代小説傑作選 (新潮文庫)
山本周五郎、平岩弓枝、宮部みゆき・・・・
著者の名前を見るだけで豪華な一冊です。
一つの話が40ページほどの短編集ですから、つるっと読めてしまいます。どの作品もハッピーエンド!というわけではないのですが、決してバッドエンドではなく、読み終えた後は心が何か温かい物で満たされます。
ぜひ読んでください。この内容の濃さ、損は無いはずです!
飢餓海峡 [DVD]
史上最強の映画の一本。西の横綱が「市民ケーン」なら東はこれしかない。
16ミリで撮影してブローアップしたざらざらして生々しい画面、映画的リアリズムをとことん見せ付けるキャメラとアングル、何度見ても強烈な居心地悪さを与えるソラリゼーションによる心理描写、そして内田吐夢のシグネチャであるロングショットの数々。
だがそれだけではない。怪力の大男三国連太郎、女の哀れ左幸子の朴訥な田舎娼妓、うらぶれた退職刑事が執念の親爺に変身する伴淳三郎さらに脇を固める強烈な個性たちがぶつかり合う、もうそれだけでも果てしなく泥沼な世界をひとつの映画中このように捌ける(いや捌かずむしろそのまま撮ってしまえる)のは内田監督以外にいない。
さらに各シーン、モンタージュ問わず、全体を通して、映画自体が空中分解してしまいそうな、そういう不安定さが続くのだが、それこそがそのままこの救いようの無い人間たちの物語りそのものの強烈なカリカチュアなのだ。
一度見てしまったあなたはもう、もどるみちねえぞお〜けえるみちねえぞお〜。
天城越え [DVD]
「砂の器」に通ずる事件を追う刑事の執念をベースに、迷宮入りの殺人事件にまつわる娼婦と少年の出会いと別れを描いたサスペンスの傑作。原作は短編集に収録されている一篇。
この作品の魅力は何と言っても田中裕子の妖艶さ、女性としての優しさを極めた演技だろう。殺人犯の少年の代わりに逮捕され送還される際に、野次馬の中の少年と対峙するシーン。何度か繰り返される彼女のカット、無言のセリフ(初めて観た時はたぶん「さようなら」と言ったのだろうと思った)のシークエンスは幻想的だ。じめじめとした暑さの中で(過去のシーンも現在のシーンも)、事件を追い続ける老刑事の渡瀬恒彦も好演。全編通して、曲者の脇役たちがコメディタッチな演技を見せていて、そのシーンが記憶に残るくらい印象的。坂上二郎、柄本明、石橋蓮司と樹木樹林の喧嘩ばかりしている夫婦などなど。